2025年のFIFAクラブワールドカップ決勝で、チェルシーがパリ・サンジェルマン(PSG)を3-0で下し、世界一の座に輝いた。準決勝でレアル・マドリードを4-0で撃破し、頂点に最も近いと見られていたPSGを相手に、まさかの完封勝利。しかもその戦い方は、PSGが得意とする「ハイプレス×トランジション」をそっくりそのまま逆用したものだった。
【試合結果速報】チェルシーがパーマーの大活躍により優勝! パリ・サンジェルマン5冠を逃す|FIFAクラブワールドカップ2025決勝
チェルシーの指揮官エンツォ・マレスカ監督は試合後、「私はチェスの専門家ではないが、チェスは好きだ。相手の試合を分析したら、彼らの左サイドにかなり広いスペースがあることが分かったので、そこを攻められるか試してみたかったんだ」と語った。
ターゲットとなったのは左サイドのスペシャリストであるヌーノ・メンデス。今季ヨーロッパ屈指のサイドバックとして活躍した守備の要であり、さらに彼の前に位置するクヴァラツヘリアもハードワークを得意とするウィンガーだ。
モハメド・サラー、ヴィニシウス・ジュニオール、ブカヨ・サカなどこれまで多くのスターが苦戦を強いられてきたが、コール・パーマーは輝きを放っていた。
チェルシーのジョアン・ペドロは試合後、「コール(パーマー)がいたからこそ、相手の左サイドから攻める機会が増えた。彼が試合を決定づける力を持っていることは、みんな分かっていると思う。僕は彼にスペースを与えるようにプレーし、結果的にそれがうまくいった」と振り返った。
I asked Joao Pedro what Chelsea saw on the PSG left flank that they thought they could exploit.
— Kyle Bonn (@the_bonnfire) July 13, 2025
Turns out, it had nothing to do with PSG at all. “We attacked more down their left because Cole [Palmer] is there, and you guys know he can decide the game like he did.” #ClubWorldCup pic.twitter.com/1nDOSPNE4h
パーマーの1点目は、右サイドでのギュストの見事な仕掛けから生まれたが、2点目は彼の独壇場だった。右サイドを突破し、ヴィティーニャとベラルドをフェイントで翻弄し、1点目と似た形でゴールを決めた。
マレスカ監督も「こういう大舞台でこそ、彼のような選手が輝く。素晴らしい仕事をしてくれた」と称賛している。
Deja Vu Vibes! See his second Cole Palmer goal from ALL ANGLES 🎯🔥
— DAZN Football (@DAZNFootball) July 13, 2025
It’s like watching the first... but somehow colder 🧊
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実際のゲームプランはさらに緻密なものだった。PSGの中盤が頻繁にローテーションを行いながら攻撃を仕掛けてくる点を逆手にとり、チェルシーはその裏に生まれるスペースを徹底的に突いたのである。
「相手の中盤は3人いて、そのうち2人はモイ(カイセド)、ヴィテーニャはエンソ(フェルナンデス)の担当だった。コールとマロ(ギュスト)をサイドで起用し、少しオーバーロードを狙ったんだ。これが我々のゲームプランだ。何度も言ってきたように、私は様々なゲームプランを使って、選手たちが全力を出し切れる状況を作り出すようにしている」とマレスカ監督は明かす。
それは本質的にPSGがやっていたことだ。ルイス・エンリケ監督は今シーズン、サイドとピッチ中央の両方でオーバーロードを駆使し、背後のスペースを巧みに利用することで、多くの勝利を手にしてきた。チェルシーのマレスカ監督は選手たちにPSGほどのローテーションはさせなかったものの、基本的なコンセプトは同じだった。
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Chelsea are doing a PSG to PSG.
— Kyle Bonn (@the_bonnfire) July 13, 2025
Look at Joao Pedro's heatmap from the 1H of the Club World Cup final...he's basically doing an Ousmane Dembele, dropping in on both wings and in defense. pic.twitter.com/tHamGf8pRV
さらにマレスカ監督はこう語っている。「PSGには強度の高いプレスが必要だと思った。あのチームに時間とスペースを与えれば間違いなくやられる。実際、最初の10分間は理想的な形でプレッシャーをかけられた。90分間続けるのは天候の影響もあって現実的ではなかったが、できる限りアグレッシブにいこうと選手たちに伝えていた」
実際、チェルシーは前線からの激しいプレスでPSGを封じ込み、何度もボールを奪っては鋭いカウンターに繋げた。普段ならプレス回避から生まれるスペースを活用する側のヴィティーニャが、この日は逆に繰り返しボールを失い、4度の地上戦で勝ったのはわずか1回、クロス5本はすべて失敗と、カイセドの執拗なマークに苦しめられた。
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マレスカ監督は試合後の会見で「メッセージは明確だった。試合の勝敗は最初の10分で決まったと思う。試合前には『自分たちは勝ちに来た』と相手に思わせる必要があると伝えていた」と話している。
また、守備だけでなく、GKロベルト・サンチェスのロングボールも攻撃の起点として機能していた。右サイドへ何度も展開されるパスは公式には26本中9本の成功にとどまったが、チェルシーが素早く回収する場面が多く、PSGには脅威となった。
他の多くのチームが自分たちのスタイルを貫いてPSGの圧力に屈していた中、マレスカ監督はプライドを捨て、PSGが得意とする戦術をそのまま使うことを選んだ。ボール保持率はわずか30%ながら、高い位置からのプレスと鋭いカウンターがはまり、前半だけで3ゴールを奪いきった。
ディフェンスリーダーとしてチームに貢献したDFコルウィルは、「監督が完璧な攻略法を示してくれて、それを信じてやりきった。コールが右サイドから中に入っていく動きは完全に効いていた。また、目立たないところで貢献してくれた選手も多い」と語っている。
大胆な戦術変更、スーパースターへの信頼、そして勝利への執念。すべてを賭けたマレスカが、クラブワールドカップの栄光をチェルシーにもたらした。
原文:How did Chelsea win the Club World Cup final? Enzo Maresca trusts Cole Palmer to beat PSG at its own game
翻訳:小山亮(スポーティングニュース日本版)
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