引き際を間違えた? 再びリングに上がるパッキャオに人々は無関心

コントリビューター
Andreas Hale
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マニー・パッキャオは7月14日、クアラルンプールでルーカス・マティセーと対戦する。プロとして69戦目となるリングだ。かつて地球上で最も偉大なボクサーと考えられていたファイターも、40歳が近づく中で、全盛期の栄光が完全に消え去るかのようにどんどん小さくなるのを見てきた。

それでも、彼はまたリングに上がる。その理由は、明らかに金銭的なものだ。他がうらやむようなペイ・パー・ビュー(PPV)をパッキャオ戦が記録していたのは、それほど昔ではない。マティセー戦は『ESPN+』でストリーミングされる。フロイド・メイウェザーに判定負けした3年前には、歴代最多PPVを記録した。だが、今回はそこから“急降下”が見込まれる。

悲しいかな、2018年のパッキャオのファイトを本当に気にしている者はいないのだ。

ボクシング史上最多の8階級を制し、全世界のメガスターだったチャンピオンにとっては、厳しい現実だ。だが、2018年になり、パッキャオ戦は関心を持たれていない。ボクシング界全体の大勢に大きな意味をもたらさないからだ。

テレビの前に陣取るよりも、多くの人は試合翌朝に目が覚めてから、ツイッターのフィードを見て「彼はまだやっているのか?」と言うのだろう。

ボクサーがいつグローブを脱ぐべきなのかは、我々がとやかく言うことではない。だが、公の関心が薄れているのなら、おそらくファイターは未来を考えるべきだろう。だが、メイウェザーに負けて1億2000万ドルをくだらない巨額を荒稼ぎしたことを考えれば不思議ではあるが、パッキャオが本当に金のために戦っているのであれば、伝説的なキャリアの終わりとして残念なことだ。

おまけに、パッキャオのボクシング仲間たちはすでに去っている。メイウェザーはUFCのスターであるコナー・マクレガーとの対戦で3億ドルを手にして去った。ティモシー・ブラッドリーは『ESPN』のコメンタリーブースに座っている。ミゲール・コットも昨年12月、サダム・アリに敗れてキャリアに終わりを告げることを決めた。ファン・マヌエル・マルケスも4年戦っていないことを考えれば引退したようなものだ。オスカー・デ・ラ・ホーヤはプロモーターであり、リッキー・ハットンはアルコール依存と戦ったが、今はトレーナー兼プロモーターになっている。

だが、メイウェザーを除き、前述したすべてのファイターたちよりも世界におけるビッグスターだったパッキャオは、ボクシングが優先事項でないにもかかわらず、何かしらの理由でグローブを脱いでいない。人生のこのステージになれば、ボクシングより家族や信仰、フィリピン上院議員として同胞たちに尽くすことが優先される。ボクシングはパッキャオが金を稼ぐためだけのものだ。

であれば、なぜ我々が気にかけなければいけない?

「マニー・パッキャオ」をグーグルで検索すれば、彼のウィキペディアのページがボクシングのキャリアだけに集中していないことに気づくだろう。バスケットボール選手や政治家、俳優、歌手としてのキャリアを含め、彼の人生における情報が多いことから、ボクシングキャリアに関してはウィキペディアの別ページが存在する。

かつて、偉大なるシュガー・レイ・レナードは「ボクシングはプレイするものじゃない。ゴルフやテニスはできるが、ボクシングは違う」と言っている。

今、パッキャオはボクシングをプレイしているようだ。無意識で相手のパンチを食らう危険を理解していないというわけじゃない。だが、パッキャオがかつて持っていた相手を倒そうという飢えは、別のことで満たされてしまっているかのようなのだ。

さらなる証拠が必要というなら、フレディ・ローチが陣営から去り、親友ブボイ・フェルナンデスを正コーチとしたことが、パッキャオが稼ぐことだけに集中していることを証明している。もはや、ベストでいることを優先していないのだ。言うまでもないが、政治家や父親としての忙しさから、練習は空き時間にしなければいけない。

幸いにも、マティセーはテレンス・クロフォードやワシル・ロマチェンコのような脅威と見られていない。エンターテイメントとしてのファイトとなるはずだ。そして立っている限り、彼はまたファイトするだろう。かつて才に恵まれたパッキャオだけに、彼はずっと有能だった。だが、もはや危険なボクサーではない。そしてその危険な感覚がなければ、興奮は失われる。

彼が最後にKOを記録したのは、ミゲール・コットを12回TKOで下した2009年11月14日のことだ。以降の彼は、マルコ・アントニオ・バレラを11回TKOで沈め、世界を驚かせた2003年から、各階級で暴れまわっていた彼からほど遠い。

当時の勢いは、ミーハーもハードコアも問わず、ファンを夢中にさせるほど驚異的だった。そして2008年、8ラウンドの末にデ・ラ・ホーヤを引退に追いやったときに、パッキャオはメイウェザーと「陰と陽」の関係になったのだ。

マルケスとの3度目のファイトのころにパッキャオが鋭さを失ったのはよく知られている。結婚生活の問題や信仰などから、パッキャオの闘争本能は薄れていった。ボクシング以外のことにより集中するようになり、人道的な取り組みがボクシングキャリアの中心となった。恵まれない人のために、パッキャオは金を必要としたのだ。そして彼が金を稼いできた場所は、ボクシングのリングだ。

全体的な能力か、原動力か、その双方か、2012年にマルケスにショッキングなKO負けを喫したときに、それらのすべてが頭をよぎった。多くのボクシングファンはラッキーパンチのせいであり、マルケスが常にパッキャオを苦しめてきたからだとした。それに、ファンはメイウェザーとの決着をあきらめたくなかったのだ。そして、ファンはマルケス戦のKOや、ブラッドリーで物議を醸した黒星に目をつむった。2013年から2014年に、パッキャオはブランドン・リオス、ブラッドリー、クリス・アルギエリを下したが、いずれもパッキャオらしさで知られた白熱したファイトにはほど遠い。我々は認めたくなかったが、我々が愛したパッキャオはいなくなったのだ。

ライトなファンは、パッキャオの堅実だがパッとしないファイトを心配せず、メイウェザーとのメガファイトが発表されたときは、想像力をかきたてた。注意深く見守ってきた者たちは、2015年5月2日に対戦したときにパッキャオにはチャンスがないと認めていた。メイウェザーは以前同様にシャープだったが、パッキャオには脅威がなかったのだ。

メイウェザーは、金にしてボクシングから去るタイミングを知っていた。パッキャオは、知らなかった。

代わりに、ブラッドリーと3度目の対戦や、一方的ながらため息がでるようなジェシー・バルガス戦で、パッキャオは5年以上前からの成功の波に乗り続けた。そして、ホーン戦だ。10年前なら圧勝したはずの相手に12ラウンドまで持ち込まれ、議論を呼ぶ判定で敗れた。

ホーンは決してパッキャオと渡り合える立場のボクサーではなかった。だが、パッキャオもパワーとスピードの破壊的コンビネーションで相手を撃破するパッキャオではなかったのだ。それは、6月9日にクロフォードが簡単にホーンを下したことが強調している。

パッキャオは敗れ、普通の人間のようだった。ライトなファンも、上院議員パッキャオはボクサーのパッキャオとはまったく違うということを認識しなければいけなくなった。そして上院議員パッキャオは、ボクシングのリングで見ても楽しくない。

世界の人々は、あまりに長くかつてのパッキャオにしがみつき過ぎた。過去10年にわたるパッキャオの成功という馬車は、ようやく、本当はカボチャでしかないと認められるようになったのだ。よく言えば、堅実な相手をまだ倒せる狡猾なベテラン。悪く言うなら、全盛期を過ぎた過去のファイターであり、トップクラスと対戦する立場にはない。

マティセー戦でパッキャオがひどく傷つくようなことがないように十分な魔法がかかることを願う。コミッションがファイトを認めないことを考えるほどの立場にはない。だが、思いもよらないときにすべてが大きな音を立てて崩れるのだ。

彼のレガシーとして近年のことは記憶されないことが慰めかもしれない。大半のファイターと同じく、パッキャオは“期限切れ”の日を越えてファイトするだろう。だが、すべてが終わったときに確かなのは、全盛期に彼がつくった思い出だ。ただ、今は、キャリアを終わらせることができない――あるいは終わらせようとしない――レジェンドに対する人々の無関心を我々は目撃している。

原文:Manny Pacquiao is fighting again and nobody cares(抄訳)
翻訳:Hiroaki Nakamura

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