2025年5月14日、稲垣弘則氏が代表理事を務める一般財団法人スポーツエコシステム推進協議会は東京都内でシンポジウムを開催し、海外のスポーツベッティング市場における日本のスポーツの取り扱われ方や、日本から海外のオンラインサイトへのアクセス実態などの調査結果を発表した。
同調査によると、日本国内の居住者による違法越境スポーツベッティング市場の規模は年間約6.5兆円に達しており、そのうち約1兆円が日本スポーツへの賭けに関連するものであると推計された。
加えて、海外居住者が日本のスポーツに賭ける市場(フリーライド市場)は年間約4.9兆円規模とされている。このうち約6割(2.9兆円)はサッカーが対象で、主にJリーグが賭けの対象になっているという。

スポーツエコシステム推進協議会
違法配信・肖像権侵害の実態
調査では、海外のオンラインベッティング業者が日本の試合映像を無断でストリーミング配信し、映像内にオッズや賭け画面を重ねて配信しているケースが確認されたことが報告された。選手やクラブのロゴ、肖像などを用いた広告展開も複数報告されており、著作権・肖像権・商標権等の侵害が多数発生しているという。
アフィリエイト構造と資金の流れ
スポーツベッティングサイトの多くは、日本語でのプロモーションを展開しており、アフィリエイト広告を通じて日本居住者への勧誘が行なわれている。広告主は、紹介したユーザーの月間負け金額の約20~30%を報酬としてアフィリエイターに支払っているとされる。同協議会の推定では、アフィリエイト報酬として年間約1000億円以上が流れている可能性があるという。
違法ベッティング利用の著名事例
NPB関係者のオンラインカジノ利用
2025年2月、プロ野球オリックス・バファローズの山岡泰輔投手がオンラインカジノの利用を認め、活動を自粛したと読売新聞などが報じた。その後、日本野球機構(NPB)の調査により、オリックスを含む7球団で新たに14人の関係者がオンラインカジノを利用していたことが判明した。また、5月には読売ジャイアンツ(巨人)の2選手がカジノサイトで賭博を行なった疑いで警視庁に書類送検されたとNHKなどが報じている。
芸能界での違法カジノ利用
2025年2月、吉本興業所属の芸人2人がオンラインカジノ賭博の疑いがあるとして警察から事情聴取を受けたと報じられた。その後、4月には同事務所所属芸人6人が書類送検されたことが明らかになっている。
オンラインカジノ市場と利用者数
読売新聞などが伝えた警察庁の2025年の実態調査によれば、日本国内のオンラインカジノ利用者は約337万人、年間ベット総額は約1.2兆円とされている。また、警察庁の統計によると、2024年のオンラインカジノ関連での賭博摘発者数は279人(前年比2.6倍)となり、取り締まりが強化されている。
今後の対応・展望
スポーツエコシステム推進協議会は、違法ベッティングや映像権侵害への対応として、国内主要スポーツ団体と法律専門家による勉強会を組織し、海外団体と連携した対策の検討を進めている。今後は欧州評議会(Council of Europe)やIOC(国際オリンピック委員会)などとの連携も視野に入れているという。
現在の日本のスポーツベッティング市場は、違法でありながら実質的に規制が追いついていない無秩序な状態にある。結果として、国内から海外への資金流出が続き、また日本のスポーツコンテンツが海外ベッティングサイトによって無許可で収益化されている状況がある。
こうした構造的な問題を是正するためには、最終的には法制度によって適切に管理された健全な市場の形成が必要になるだろう。スポーツ関係者や関係機関の間で現状を正確に把握し、具体的な制度整備に向けた議論を進めていくことが求められる。