■連敗回避し優勝争いに踏みとどまる
大相撲名古屋場所は23日、11日目の取組が行われた。優勝争い単独トップだった平幕・一山本が敗れたこともあり、横綱・大の里が優勝戦線に踏みとどまった。
前日まで7勝3敗の大の里はこの日、8勝2敗の関脇・霧島と対戦。立ち合い、右を固めてぶつかるも押し切れず、逆にもろ差しを許す苦しい展開に。それでも、右の一枚回しを掴んで何とか相手の攻めをしのぐと、最後は相手の押しに乗じた上手ひねりで勝利。今場所3度目となる連敗危機をまたも回避する結果となった。
今場所の優勝争いは10日目終了時点で1敗の一山本が単独トップ、2敗力士が6名という状況だったが、11日目を終え2敗が4名、3敗が6名となった。3敗をキープした大の里は優勝の目が復活したような形だが、本人には優勝争いのことを考える余裕はないかもしれない。
■場所前から不安視された問題に苦戦か
大の里は5月に行われた夏場所で2場所連続となる優勝を果たし、場所後に第75代横綱へ昇進。これに伴い、昇進伝達式をはじめとした様々なイベントをこなした。多くのファンが新横綱誕生を祝福する一方、名古屋場所へ向けた稽古・コンディション調整に充てる時間が削られることを不安視する見方も少なからずあった。
また、大の里は2024年初場所から幕内で相撲をとっているが、同場所から2025年夏場所までの9場所においては序盤5日間が計35勝10敗、中盤5日間が計31勝9敗、終盤5日間が計30勝15敗となっている。横綱昇進以前から終盤戦でのガス欠が課題だったことも、場所前調整の不足が危惧される一因となっている。
実際、11日目の取組後の報道では、疲れもあって不利な体勢に陥ってしまったこと、逆転優勝については可能性は無いと思っていることなどを本人が語ったと伝えられている。残り4日間は優勝争いではなく、身体の消耗と向き合いながらどう相撲をとっていくべきかというところに焦点が当てられているようだ。
■勝負の残り4日間を切り抜けるカギは?
ただ、本人にその気が無くても、最後まで諦めずに優勝を狙うことは横綱の責務といえる。今場所はもう1人の横綱・豊昇龍が左足親指の故障により5日目から休場しているが、先輩横綱の不在をカバーするような盛り上がりを生んでくれることを期待したいところだ。
取組編成を行う日本相撲協会の審判部は優勝争いが大混戦になっていることを考慮し、24日の12日目以降は全取組が終わってから翌日の取組を決める異例の対応をとるという。同日は一山本との直接対決が予定される大の里も、千秋楽まで毎日が大一番という痺れる終盤戦になることは想像に難くない。
本調子とは言えない中で難敵を退け、逆転優勝を実現するためにはどのように立ち回るべきか。NHK大相撲中継で11日目の幕内解説を務めた琴風浩一氏(元大関・前尾車親方)は、霧島に勝利した要因として「今場所の大の里はちょっと上体が高い。伸びた一枚の上手まわし、ここでいらんことしないで残しにいったのがよかった。これはもう狙ったというより、動きの中から偶然出たというような感じでは。これで叩いて引いてると霧島のものだった」と指摘している。これを踏まえると、残り4日間は安易な引き・叩きを我慢し、勝負を焦らずにじっくり相撲をとれるかがカギになるかもしれない。
角界では平成以降、大の里を含め13名の横綱が誕生しているが、新横綱場所で優勝を果たしたのは貴乃花、稀勢の里(現二所ノ関親方)、照ノ富士(現伊勢ケ濱親方)の3名のみ。大の里は4人目になることができるのか、残り4日間の取組も見逃せない。
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