1年前の悪夢再来もあり得る!? 大相撲名古屋場所、優勝経験者・尊富士に懸念される強行出場の代償

柴田雅人 Masato Shibata

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時事

■強行出場続けるも実らず

大相撲名古屋場所は25日、13日目の取組が行われた。優勝争いが大混戦となっている中、この日から今場所を休場することになったのが平幕・尊富士だ。

尊富士は3勝2敗と白星先行で迎えた6日目の平幕・佐田の海戦で勝利したが、相手を寄り切った際に右腕を持っていかれる形で自らも土俵下へ転落。右腕を気にしながら膝をつくなど明らかに痛めたような様子を見せたが、7日目からは患部にテーピングを巻いた状態で出場を続けていた。

しかし、7日目以降は2連敗、1勝、3連敗と、故障の影響が大きいのかなかなか勝てない相撲が続いた。結局、5勝7敗で迎えた13日目から休場となり今場所の負け越しが決定したが、強行出場が次場所以降に影を落とすのではないかと心配しているファンも少なくない。

■1年前は強行出場が仇に

尊富士は新入幕場所となった2024年春場所で、実に110年ぶりとなる新入幕での優勝を成し遂げたことで一躍名を挙げた。同場所では14日目の平幕・朝乃山(現幕下)戦で右足を負傷するアクシデントに見舞われたが休場はせず、千秋楽の平幕・豪ノ山戦にも出場。そこで13勝目を挙げ優勝を決めると同時に、殊勲賞・技能賞・敢闘賞の三賞を総なめにした。

しかし、翌夏場所は右足関節外側じん帯損傷により全休を余儀なくされると、その次の名古屋場所でも右足の回復遅れで7日目まで休場。さらに、同場所10日目からは左大胸筋停止部断裂を理由に再休場した。無理をおしての出場が祟ったのか、回復遅れや別箇所の故障が相次いでしまった形となり、番付も東前頭6枚目から西十両11枚目まで大きく落とすことになった。

東前頭6枚目で臨んだ今場所は途中休場により、最終成績が5勝8敗2休となることが濃厚となっている。次の秋場所ではまだ幕内はキープできるが、同場所で不振や休場があった場合、1年最後の九州場所で再び十両に落ちてしまう展開もあり得るかもしれない。

■入門前からの盟友も状態を不安視

尊富士は角界最多の幕内5名を擁する名門・伊勢ケ濱部屋に所属しているが、今場所は13日目終了時点で同部屋力士の草野(10勝3敗)、熱海富士(10勝3敗)が優勝争いに絡んでおり、翠富士(8勝5敗)も勝ち越しが決定。伯桜鵬(7勝6敗)はまだ勝ち越しが決まっていないが、中日に横綱・大の里から自身初の金星を挙げるなど見せ場を作っている。強行出場を続けた背景には、仲間たちに負けなくないというような思いもあったかもしれないが、1年前と同じような苦境に陥る可能性は決してゼロではないだろう。

尊富士は今場所10日目に、鳥取城北高校時代の同期である平幕・狼雅と対戦。右腕をあまり使えないまま上手投げを食らい敗れたが、取組後は狼雅が土俵下の尊富士に近寄り手を差し伸べようとするシーンがあった。入門前からの盟友がかなり心配そうな様子を見せていたことからも、右腕の状態は思わしくないことが伺える。

同日のNHK大相撲中継で解説を務めた舞の海秀平氏(元小結)は尊富士の故障について、自身も現役時代に経験した上腕二頭筋部分断裂の類ではないかと指摘している。角界においては、数週間程度の加療を要するという旨の診断書が出されることが多い怪我だが、強行出場でかかった負担を加味するとそれ以上の時間を回復に割いた方がよさそうだ。

尊富士は現在26歳とまだまだ先がある力士であり、2度目の優勝や三役以上への出世を多くのファンから期待されている。それだけに、今場所の右腕故障や強行出場が、今後のキャリアに影を落とすような展開には至らないことを祈るばかりだ。

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柴田雅人 Masato Shibata

スポーティングニュース日本版スポーツコンテンツライター。福岡県出身。幼少期から相撲、野球、サッカーを中心に幅広くスポーツを観戦。大学卒業後からライター活動を開始し、主にスポーツ記事の企画立案、取材、執筆などに携わる。現在もスポーツ観戦が一番の趣味で、複数競技を同時に視聴することもしばしば。