観客の応援熱も冷め気味!? 大相撲名古屋場所、八角理事長も不安視する大関・琴櫻の苦境

コントリビューター
柴田雅人 Masato Shibata
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時事

■4場所ぶりの優勝は絶望的か

大相撲名古屋場所は21日、9日目の取組が行われた。優勝争いはここから本格化していくが、この段階で早くも脱落気味となっているのが大関・琴櫻だ。

前日まで5勝3敗の琴櫻はこの日、1勝7敗と大きく黒星が先行している平幕・金峰山と対戦。立ち合い胸で受けつつ右上手を狙うも、まわしに指がかからず失敗。逆に金峰山に両腕を差されると、そのまま成すすべなく土俵を割った。番付や勝敗数を考えると琴櫻の方が有利といえるような一番だったが、実際は取組時間約5秒で完敗という結果になった。

幕内の優勝争いは9日目終了時点で1敗の平幕・一山本が単独トップ、2敗で横綱・大の里ら7名が追う展開となっている。同日に4敗目を喫した琴櫻は、一山本との星の差や残り日数を考えると、優勝争いに絡むのは極めて厳しい状況に。また、名古屋場所では昨年まで2年連続でクリアしている2ケタ勝利すらも危うくなっている。

■八角理事長も現状を不安視

琴櫻は身長189センチ、体重179キロと堂々たる体格を生かした四つ相撲が持ち味の力士だが、今場所は立ち合いから圧力を欠くような相撲が散見される。勝った相撲でも取組時間が長くなるなど、相手を攻め切ることがなかなかできていない状況だ。

NHK大相撲中継で9日目の解説を務めた元大関・琴風氏(前尾車親方)は、琴櫻について「相撲が軽い」という表現で指摘。また、取組後の報道では日本相撲協会・八角理事長(元横綱・北勝海)も「気力がなく、浮ついている」とコメントしたことが伝えられている。親方衆の目にも、今の琴櫻は本来の姿とは程遠いと映っているようだ。

琴櫻は2021年秋場所で「左膝内側側副靭帯損傷、左膝内側半月板損傷」により途中休場を強いられて以降、左膝をテーピングで厚く固めた状態で土俵に上がっている。今場所は初日からここまで皆勤が続いてはいるものの、実は古傷の状態が思わしくない可能性もゼロではないかもしれない。ただ、本場所の土俵に上がる力士はみな大なり小なり故障を抱えているものでもあるため、本人としても出場している以上は言い訳にするつもりは皆無だろう。

■取組前の声援も減少傾向?

琴櫻は仕切りが制限時間いっぱいになった際、両腕をぐるりと一度回し、鬼の形相で花道方向を睨みつけてから土俵へ塩をまくという所作が広く知られている。このルーティンは本人はもちろん、場内の観客のテンションも高めるようで、自身初優勝を果たした2024年九州場所では連日場内から大声援が沸き起こっていた。

ところが、今場所はここまで場内の観客がルーティンに沸き上がった場面はあまりなく、拍手すらもまばらな状況が続いている。今年は初場所から5勝、8勝、8勝と低迷続きの琴櫻に対し、観客の期待もかなりしぼんでいることが浮き彫りになっているといえるだろう。今場所も1ケタ勝ち越し、あるいは負け越しでカド番転落となれば、状況はますます深刻になっていくことは避けられそうにない。

苦境を打破するためには、とにかく白星を1つずつ着実に積み上げていくしかない。22日の10日目はここまで5勝4敗の関脇・若隆景との対戦が組まれているが、過去1年の対戦では3勝1敗と勝ち越している。相手の調子も今一つではあるが、次期大関候補の1人でもある実力者を倒せれば大きな自信につながるのではないだろうか。

角界では先場所後に大の里が横綱へ昇進したことで、大関が琴櫻1人だけという状態となっている。大関空位を防ぐ意味でも、多くのファンが琴櫻の奮起を期待しているが、10日目以降に逆襲を見せることはできるのだろうか。

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