どうした大関・琴櫻!? “2024年最強力士”から一転、勝率5割以下の苦境抜け出せるか

柴田雅人 Masato Shibata

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時事

■昨年の無双ぶりから一転…

2025年の大相撲は初場所後に豊昇龍、夏場所後に大の里と立て続けに新たな横綱が誕生した。両力士がファンの期待に応える活躍を見せる一方で、思わぬ苦境に陥っているのが大関・琴櫻だ。

昨年の琴櫻は秋場所を除く5場所で2ケタ以上の白星をマークし、6場所計66勝で年間最多勝に輝いた。また、1年で最後の九州場所では、豊昇龍との千秋楽相星決戦を制し14勝1敗で悲願の初優勝を果たすなど、2024年で最も強かった力士と呼んで差し支えないほど活躍していた。

ところが、2025年は綱取りをかけて臨んだ初場所でまさかの5勝10敗に終わり、次場所も負け越しなら大関の座を失うカド番に転落。続く春場所、夏場所もギリギリ勝ち越しの8勝に終わった。前半3場所は45番で21勝24敗、勝率は.467と、昨年の面影はほとんど失われている状況だ。

夏場所では13日目に大の里に敗れ、角界では10年ぶりとなる13日目での優勝、ならびに横綱昇進につながる優勝を目の前で決められる屈辱も味わっているが、なぜここまで大崩れしてしまっているのだろうか。

■古傷が影響している可能性も?

琴櫻の前半3場所を見ると、初日から中日までは計13勝11敗と勝ち越した一方、9日目から千秋楽は計8勝13敗と負け越し。どの場所でも2連敗以上を喫して千秋楽を終えており、スタミナ不足が喫緊の課題として浮き彫りとなっている。初場所中の報道では、日本相撲協会の八角理事長(元横綱・北勝海)が稽古不足を指摘したことが伝えられているが、これもスタミナ不足の一因となっている可能性は少なくなさそうだ。

また、初優勝した昨年九州場所では目立っていた鋭い出足が今年初場所以降は影を潜めていること、その影響もあり十分押し切れないまま引いてしまう相撲が頻発している点も不安要素といえる。夏場所の大の里戦でも立ち合い互角で突き放したまではよかったが、そこから左に少し動きながら引いたところに付け入られあえなく土俵を割っている。

琴櫻は2021年秋場所中に「左膝内側側副靭帯損傷、左膝内側半月板損傷」という大怪我に見舞われ途中休場を強いられており、現在は左膝をテーピングで固めた状態で土俵に上がっている。翌場所からは現在まで故障休場はしていないが、相手への圧力が失われている現状を見ると、古傷が相撲に影響している可能性もゼロではないかもしれない。

■相性のいい名古屋場所で再起図れるか

7月13日の初日が約1週間後に迫る名古屋場所は、新横綱・大の里、先輩横綱・豊昇龍が優勝争いの軸になるという予想が大半となっている。琴櫻については優勝候補に推す声はさほど大きくないが、プレッシャーが少ないこともプラスに捉え、相性のいい今場所で復調を見せてもらいたいところだ。

琴櫻は初めて幕内で迎えた2020年名古屋場所では4勝6敗5休にとどまったが、2021年から昨年にかけては4回中3回2ケタ勝利をクリア。2021年と2023年については敢闘賞にも選ばれている。名古屋場所はかつて「熱帯場所」という異名で呼ばれたほど暑さが厳しい場所として知られ、コンディション調整に苦戦する力士も少なくないが、琴櫻は逆に暑い方が体の動きが良くなるタイプなのかもしれない。

名古屋場所は1965年から2024年までは愛知県体育館(ドルフィンズアリーナ)が会場だったが、今年からは愛知国際アリーナ(IGアリーナ)へ移転して行われる。今場所で優勝した力士は新会場における初代王者ということにもなるが、琴櫻は優勝戦線を牽引するような活躍を見せることはできるだろうか。

柴田雅人 Masato Shibata

スポーティングニュース日本版スポーツコンテンツライター。福岡県出身。幼少期から相撲、野球、サッカーを中心に幅広くスポーツを観戦。大学卒業後からライター活動を開始し、主にスポーツ記事の企画立案、取材、執筆などに携わる。現在もスポーツ観戦が一番の趣味で、複数競技を同時に視聴することもしばしば。