■約2年ぶりの優勝が射程圏内に
大相撲名古屋場所は22日、10日目の取組が行われた。本場所がいよいよ終盤戦に突入していく中、優勝争いに絡んでいる力士の1人が関脇・霧島だ。
前日まで7勝2敗の霧島はこの日、5勝4敗の平幕・平戸海と対戦。立ち合い、左を差した平戸海は左方向に動いて体勢を崩そうとしたが、霧島は差し手を抱え込みつつついていくと、顔面を一突きして距離を作る。その後、平戸海の足を払うような動きを見せると、両みつを掴みそのまま相手を寄り倒した。
4場所連続の勝ち越しを決めた霧島は他5名の力士とともに、優勝争い単独トップに立つ平幕・一山本を星の差1つで追走している。残り5日間次第では、2023年九州場所以来となる自信3度目の優勝はもちろん、2023年名古屋場所から2024年夏場所にかけ在位した大関復帰も手繰り寄せることになるかもしれない。
■対大の里戦が評価に大きく影響か
大関は「三役で直近3場所33勝以上」という成績の目安などを元に、日本相撲協会の審判部が昇進を判断する。霧島は先々場所は小結で8勝、先場所は関脇で11勝をマークしており、今場所は14勝以上を挙げれば目安をクリアという状況ではあった。だが、14勝はハードルが高いこと、起点が8勝は印象が良くないことなどから、今場所は大関とりの足固めを狙う場所であり、狙い通りに好成績を残せれば秋場所で大関とりに臨むというような位置づけをされていた。
ただ、NHK大相撲中継で10日目の解説を務めた舞の海秀平氏(元小結)は「明日から5日間の勝ち星と相撲内容で雰囲気が変わってくるかもしれない」としつつ、「横綱・大の里に勝って12番ぐらい勝ってくると、一気に大関復帰ということも考えられる」とコメント。終盤戦の内容次第では、大関とりの機運が急激に高まるのではという見方を示している。
霧島は23日の11日目に大の里との対戦が予定されているが、過去6戦全敗とかなり苦手にしている。ただ、今場所の大の里は立ち合い攻め切れないところから引いてしまうなど相撲に脆さが見られ、ここまでに3敗を喫している。この隙に上手く付け入り、対大の里戦初勝利を挙げることができれば、昇進を預かる審判部に大きなインパクトを与えることは間違いないだろう。
■終盤戦の取組は立ち合いにも要注意
番付では大関は東西に最低1名ずつは置かれなければならないとされているが、夏場所後に大の里が横綱へ昇進したことにともない、大関は琴櫻1名のみに。そのため、今場所は大の里が「横綱大関」として形式上大関を兼ねている。“欠員”が発生していることに加え、琴櫻が今場所5勝5敗と不振で先行きも不透明になっていることは追い風になり得るが、逆に短命大関になってしまった過去から昇進可否を厳しく判断される可能性もある。
いずれにせよ、機運が高まるかは前述の大の里戦を含め、残り5日間でどれだけ内容を伴った勝ち星を挙げられるかが重要となる。今場所の霧島は立ち合いで相手と呼吸を合わせられないような取組が散見され、9日目の平幕・伯桜鵬戦では3度も立ち合いが不成立に。同戦はこれが影響したのか、立ち合い当たってからすぐ左に動くなど消極的な相撲になってしまい、結果押し出しで2敗目を喫している。こうした取組は勝ち星的にも相撲内容的にも非常にもったいないため、残り5日間はここまで優勝争いに絡んでいる自分の実力を信じ、相手に堂々とぶつかって勝利を得るような相撲を期待したいところだ。
霧島は新型コロナの影響で東京開催となった2020年から幕内として名古屋場所を戦っているが、昨年までの5年間は1ケタ勝ち越し3回(2021、2022、2024)、負け越し2回(2020、2023)とあまり相性は良くなかった。今年は会場が新しくなった影響もあってか、昨年までとは一味違う戦いぶりを見せているが、この勢いのまま優勝や大関復帰までたどり着けるかどうかは要注目だ。
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