■大の里の横綱昇進で大関は1人だけに
2025年5月11日~25日にかけ行われた大相撲夏場所は、綱取りをかけた大関・大の里が2場所連続優勝(14勝1敗)を果たし見事第75代横綱へと昇進した。今年初場所後の豊昇龍に続く横綱昇進となったが、これにより大関は琴櫻1人だけとなった。
東西に最低1名ずつ置かれる大関・関脇・小結の三役は、江戸時代から番付上は欠くことができないとされている。関脇・小結については特に昇進基準はないため、下の地位から好成績力士を引き上げることでほとんど対処は可能だ。一方、大関は「三役(関脇・小結)で直近3場所33勝以上」という昇進目安をクリアする必要があるため、今回のように人数が揃えられない事態も時折起こっている。
番付において大関が空位となっている場合は、横綱が「横綱大関」として、形式的に大関を兼任することになっている。そのため、次の名古屋場所では大の里が「横綱大関」として番付に記載される予定だが、願わくば1場所でも早く新大関が誕生し番付を埋めてもらいたいところだろう。
■次の大関候補は3名
夏場所では関脇の大栄翔・霧島、小結の高安・若隆景の内、高安以外の3名は2ケタ以上の白星を挙げている。当面はこの3名が、大関昇進目安をクリアする可能性のある有力候補といえる。
大栄翔は関脇として初場所で11勝、春場所で9勝を挙げたことから、夏場所では優勝を含めハイレベルな成績なら大関昇進もゼロではないとみられていた。結果は10勝で実現には至らなかったが、大関とりの起点としては及第点。名古屋場所ではさらに足場を固めるため、11勝以上の白星が欲しいところだ。
霧島は2023年初場所~夏場所にかけて昇進目安をクリアし、通算6場所大関に在位した経験を持っている。大関陥落後は成績にムラがあるものの、5月場所では11勝をマークし大関とりの起点を作った。前回昇進目安をクリアした時は小結で11勝、関脇で12勝(優勝)、11勝という内訳だったが、この流れを再現することはできるだろうか。
若隆景は当時関脇だった2023年春場所で右ひざに大けがを負い、一時は幕下まで番付を落としながら復活してきている。先の夏場所では、関脇として自身初優勝を果たした2022年春場所以来となる12勝をマークした。昨年は平幕として名古屋場所で11勝、秋場所で12勝を記録しているが、今年も同等の成績を残せばまず間違いなく大関に昇進するだろう。
■33勝未満でも昇進のチャンスアリ?
前述の大関昇進目安はあくまでも目安であり、白星の内訳や相撲内容はもちろん、番付の状況によっても昇進ハードルは上下する。過去には目安よりも多い勝利数をマークしながら昇進を見送られた力士もいるが、大関の頭数が不足している現状では逆に目安未満でも昇進チャンスがあるといえる。
直近の角界では2020年春場所で鶴竜(現音羽山親方)が38年ぶりに、2023年初場所~夏場所では照ノ富士(現伊勢ヶ濱親方)が3年ぶりにそれぞれ「横綱大関」を務めているが、2020年のケースは関脇・朝乃山(現幕下)が3場所32勝ながら大関に昇進したことで終止符が打たれている。大栄翔、霧島、若隆景の3名にも、朝乃山と同じような追い風が吹く余地は少なからずある。
また、大相撲は今年10月、実に34年ぶりとなるイギリス・ロンドン公演が控えてもいる。同公演は幕内力士約40名が参加予定だが、番付がきっちり揃った状態で一大イベントに臨みたいという意向を日本相撲協会が持っているとしても不思議ではないだろう。そうなると、昇進判断が多少甘めになる可能性もゼロではないのではないか。
現大関の琴櫻が現在5勝、8勝、8勝と不調に陥っていることを含めると、可能ならば2名は新たに大関に欲しいところ。今回名前を挙げた3名がその座を射止めるのか、それとも他力士が台頭してくるのか。後半3場所の大きな見どころとなりそうだ。