■優勝争いの裏で大一番が到来
大相撲名古屋場所は26日、本場所最後の一日である千秋楽を迎える。初優勝がかかる平幕の琴勝峰(12勝2敗)、安青錦(11勝3敗)、草野(11勝3敗)の裏で、重要な一番に臨むのが関脇・若隆景だ。
若隆景は小結で臨んだ2025年夏場所で12勝3敗の好成績をマークしたことにより、今場所は大関とりの足固めになる場所と位置付けられた。大関は「三役で直近3場所33勝以上」という目安をクリアできるかが昇進に関わるため、今場所は2ケタ以上の白星が欲しい状況であったが、迎えた場所では中日までに4敗を喫したため情勢は厳しいかと思われた。
しかし、9日目からは大関・琴櫻や優勝争い中の草野らを倒し5連勝を記録。25日の14日目で横綱・大の里に敗れ連勝は止まったが、9勝5敗と2ケタ勝利にリーチをかけ、千秋楽はこちらも大関候補である関脇・霧島と激突する。
■2ケタに乗せられるかは死活問題
角界では2000年以降、武双山(2000年夏場所)から大の里(2024年九州場所)まで、実に25名もの力士が大関へと昇進した。直近3場所の成績は32勝~37勝とバラツキがあるが、25名中16名は3場所全てで2ケタ勝利をクリアしている。一方、起点となる1場所目で1ケタだったのは7名、足固めとなる2場所目での1ケタは2名、最後の3場所目で1ケタに終わったのはゼロとなっている。
3場所の内1つが1ケタにとどまると、他の2場所では優勝も狙えるレベルの白星を稼いでカバーする必要が生じる。仮に8勝なら2場所25勝、9勝なら同24勝をマークしないと目安クリアにはならないが、前述の通りカバーに成功したケースは少ない。また、大関昇進は日本相撲協会の審判部が可否を判断するが、負け越しは論外として、1ケタ勝利も見栄えが悪いとして評価を下げる傾向が強い。そのため、大関昇進を本気で狙うなら1ケタは絶対に避けたい成績であるともいえる。
今場所は先場所12勝の若隆景、同11勝の霧島が大関とりの足固めを狙ったが、霧島は千秋楽に勝っても9勝のため、過去のケースを踏まえると大関とりは一旦白紙となる公算が高い。一方、若隆景は勝てば来場所は大関とりの場所、負ければ霧島と共倒れになる形で大関挑戦は出直しとなることが濃厚だ。
■大一番をモノにするためのカギは?
千秋楽の一番はキャリアを左右しかねないほどの大一番になり得る若隆景だが、対霧島戦は過去1年は3勝1敗と勝ち越している。ただ、通算だと7勝8敗(内不戦敗1)であるため、相当な気合を入れて臨む必要がある相手だといえるだろう。
過去1年の戦いを振り返ると、2024年九州場所は立ち合いの押し合いから右を差すと、その右を抱え込んで粘ろうとする霧島を休まずに攻めて寄り切りで勝利。翌2025年初場所では、立ち合いぶつかってから左に動いた霧島に右腕を手繰られ、そこからほとんと抵抗できないままとったりで敗れた。続く春場所では霧島の引きに乗じてもろ差しの体勢となり、そのまま一気に土俵外へ寄り切り。先場所は逆にもろ差しを許し土俵際へ追い込まれるも、左上手を引きつつ、右腕で首投げを決め鮮やかな逆転勝利を収めた。
直近の対戦内容を踏まえると、今回の対戦も右腕を上手く使えるかが勝負を左右する可能性が高い。右を差しつつ左をおっつけ、相手を浮かせるように圧力をかけられれば勝機は十分だろう。逆に、右を警戒した霧島からおっつけられたり、初場所の対戦のように手繰られたりすると一気に旗色が悪くなることが濃厚だ。
前半の手遅れから立て直し、大関返り咲きを狙う実力者を最後に倒して10勝フィニッシュとなれば、審判部の印象もグッと良くなることは間違いない。自らの手で大関とりの機運を高められるか、千秋楽の大一番は要注目だ。
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