■夏場所は好成績も番付運に恵まれず
日本相撲協会は6月30日、7月13日~27日にかけ開催が予定される名古屋場所の新番付を発表した。その内容について少なからず話題となったのが、平幕・安青錦の三役“お預け”だった。
安青錦は東前頭9枚目で臨んだ夏場所で、新入幕だった春場所に続く11勝をマークし敢闘賞にも選ばれる活躍を見せた。一方、同場所では東小結・高安から、西前頭5枚目・千代翔馬までの力士が全員負け越し。そのため、年6場所制となった1958年以降では史上最速(幕下付け出しを除く)となる、初土俵から所要11場所での新三役昇進が期待されていた。だが、新番付では高安が6勝9敗ながら西小結に残留し、安青錦は東前頭筆頭にとどまっている。
小結で6勝に終わった力士が翌場所も小結に残留するのは、1場所15日制が定着した1949年夏場所以来初めてのケースだという。不運な形で三役を逃した安青錦だが、初土俵から新三役昇進までの最速記録は小錦(元大関)、朝青龍(元横綱)、琴欧洲(元大関、現鳴戸親方)の所要14場所で、記録更新のチャンスはまだ残されている。また、ここまでの幕内での戦いぶりを見ると、名古屋場所後にも三役の座を掴みそうな気配を漂わせている。
■幕内の土俵で見せる強みは
安青錦は春場所、夏場所でそれぞれ11勝を挙げているが、春場所では序盤5日間で2勝、中盤は全勝、終盤は4勝、夏場所では序盤4勝、中盤4勝、終盤3勝という内訳となっている。力士の中には最初は好調だが段々尻すぼみになっていく、あるいはスロースターターでなかなかエンジンがかからないといった課題を抱えるものも少なからずいるが、初日から千秋楽までおおむね安定して相撲を取れているのは大きな強みだろう。
また、相手の大小に関わらず頭をつけ、低い体勢から攻めを繰り出す形を継続できている点も評価できる。夏場所では自身より身長が低い翠富士(安青錦は182センチ、翠富士は174センチ)に対し、左上手を取りつつ頭をつけたところから内無双を決めるという一番もあったが、自身のスタイルを貫き通せていることも安定感につながっているのかもしれない。
加えて、2場所で喫した8敗の内、番付が下の力士相手の黒星は1敗のみと取りこぼしが少ない部分も目立つ。一方、役力士に対しては1勝4敗と苦戦を強いられており、この点が名古屋場所の番付編成に影響した可能性もゼロではないが、今後どのように実力をつけ改善していくかは注目ポイントといえそうだ。
■大の里と同じ道を歩めるか?
名古屋場所では新横綱・大の里が優勝争いを牽引することが予想されるが、その大の里と安青錦にはある共通点がある。それは新入幕から2場所連続で11勝を挙げ、敢闘賞も受賞していることだ。
大の里は新入幕の2024年初場所で11勝をマークし敢闘賞を獲得すると、続く春場所でも11勝を記録し敢闘賞、技能賞に選ばれた。さらに、新三役・小結で迎えた夏場所で自身初優勝を果たすと、関脇だった秋場所でも優勝し大関へ昇進。勢いは衰えることのないまま、2025年春場所、夏場所で2場所連続優勝を成し遂げ、第75代横綱への昇進を文句なしで決めている。
仮に安青錦が大の里と同じ道を辿るとすると、名古屋場所で自身初優勝を果たした後、瞬く間に横綱まで駆け上がるということになる。もちろん、優勝や横綱昇進は少々ハードルが高いかもしれないが、平幕時代の大の里と同等の実績であることを考えると、三役定着や大関とりはそう遠くない未来に実現するのではないだろうか。
自身初の上位総当たりが予想される名古屋場所を楽しみにしているという安青錦。場所前の調整もここまでは順調に来ているというが、今場所でも快進撃を続けることはできるだろうか。