シェシュコ vs ホイルンド|ユナイテッドは同じ移籍の過ちを繰り返すのか?

Dom Farrell

小鷹理人 Masato Odaka

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現代のマンチェスター・ユナイテッドは、「危機の連続と、その中での復活」を繰り返してきたが、再びポジティブな方向へと振り子が振れている。

昨シーズンの15位という成績は、プレミアリーグで最も成功を収めてきたクラブにとって、最悪なシーズンとなった。さらに、ヨーロッパリーグ決勝で、プレミア17位のトッテナムに敗れている。

しかし、ルーベン・アモリムは、トレーニンググラウンドで自身の戦術を浸透させるための時間を確保できたようだ。攻撃陣にマテウス・クーニャとブライアン・エンベウモが加わったことで、彼の構想に合ったチームができつつある。

ユナイテッドは、プレミアリーグ・サマーシリーズで2戦2勝を記録。ウェストハムに2-1で勝利した後、ボーンマスを相手に4-1という見事な勝利を収めた。

後者の試合ではラスムス・ホイルンドが2得点を挙げたが、マンチェスター・イブニング・ニュースの報道によると、ユナイテッドはこのデンマーク人ストライカーに見切りをつけ、2023年にアタランタから獲得した際に最大7,200万ポンド(約9,560万ドル)を支払った選手に、3,000万ポンド(約3,980万ドル)の移籍金を要求する準備を進めているという。

ヴィクトル・ギェケレシュはスポルティングCPでアモリムのもとで大成功を収めたが、アーセナルへの移籍を選んだ。そのため、ユナイテッドは現在、RBライプツィヒのベンヤミン・シェシュコに照準を合わせていると報じられており、ニューカッスル・ユナイテッドとの間で獲得競争が勃発しそうだ。

シェシュコは、才能があり、荒削りで、体格に恵まれた22歳だ。これから大いに成長する余地がある。これまでの得点記録は堅実で、将来性はあるものの、決して「量産型」ではないという事実は、この点を物語っている。

シェシュコ vs ホイルンド、ユナイテッドは同じ失敗を繰り返してしまうのか?

もしシェシュコがオールド・トラッフォードに移籍すれば、彼はホイルンドと似た道をたどることになるだろう。オーストリア・ブンデスリーガで印象的な活躍を見せた後、欧州5大リーグの1つであるヨーロッパのライバルクラブを経て、イングランドへと渡る道だ。

両者ともに22歳で、ホイルンドの方がシェシュコより3ヶ月年上だ。シェシュコはホイルンドのような急激なキャリアの加速を経験していないため、それが彼に有利に働く可能性がある。

ホイルンドは、FCコペンハーゲンで32試合に出場(うち先発はわずか5試合)し、5ゴールを挙げた後、2022年1月に180万ユーロ(約200万ドル)でシュトゥルム・グラーツに加入した。2021-2022シーズンの残り期間と翌シーズンの開幕数週間で、彼はこのオーストリアのクラブで公式戦21試合に出場し12得点を記録。グラーツはわずか8ヶ月で、彼をセリエAのアタランタに1,700万ユーロ(約1,970万ドル)で売却し、非常に大きな利益を上げた。

2021-2022シーズン、シェシュコは主にRBザルツブルクで途中出場し、5ゴールを挙げている。これは、2部リーグのFCリーフェリングでの得点力の高いレンタル移籍に続くものだった。ホイルンドがオーストリアからイタリアへと移籍した後、シェシュコは国内トップリーグで30試合に出場し16ゴールを記録し、ザルツブルクのリーグ連覇に貢献した。

これらの活躍により、シェシュコはレッドブル内で次のステップへ進む準備ができたと見なされた。ユナイテッドとアタランタがホイルンドの移籍で合意したのと同じ2023年7月、彼はRBライプツィヒへと移籍した。

Rasmus Hojlund
Getty Images

アタランタでジャン・ピエロ・ガスペリーニ監督(アモリムと同様、攻撃的な3-4-3をベースとしたバリエーションを好む監督だ)のもとで、34試合10得点というホイルンドの成績が、ユナイテッドに巨額の資金を投じさせた。彼はエリク・テン・ハーグ監督のもとで不安定なチームに加わり、オールド・トラッフォードの厳しいスポットライトの下、好不調の激しいシーズンを経験した。

プレミアリーグ初ゴールまで14試合という気の遠くなるような時間を要したが、その後、続く6試合で7ゴールを挙げた。これがプレミアリーグ30試合10得点の大部分を占めており、チャンピオンズリーグの無様なグループステージでも、ホイルンドは6試合で5ゴールを挙げ、一筋の光明となった。

シェシュコのプレーにも、このような「波」が見られた。ライプツィヒでは、インパクト・サブとして出場することが多かったが、2023-2024シーズンのブンデスリーガ最終7試合で連続得点を記録し、このシーズンは31試合で14ゴールを挙げた。

シェシュコは、昨シーズンも33試合で13ゴールという形でこれを証明した。しかし、彼は疑いのない先発のファーストチョイスであり、ホイルンドより870分多くプレーして、ゴール数は1つ少なかった。これは、明らかな潜在能力を持つ選手としてはまともな数字だが、確実な結果を出せるタイプではない。たとえば、アーリング・ハーランドがたどったような、「オーストリア→ドイツ→プレミアリーグ」という道とはまるで違う。

では、ユナイテッドがホイルンドというプロジェクトは終焉を迎えたと判断したように見えるこの時期に、なぜシェシュコこそが自分たちの求める選手だと考えているのだろうか

なぜ今、ユナイテッドはシェシュコを欲しがるのか?

シェシュコのYouTubeのハイライト動画では、彼のスピード、パワー、そして驚異的なシュートが目立つが、アモリムの注目を引いたのは、彼が下がってきてプレーをつなぐ能力であることは間違いないだろう。

このポルトガル人監督が採用する3-4-2-1のフォーメーションでは、センターフォワードがこの役割をこなすことで、ウィングバックが攻撃参加するスペースが生まれ、サポートする攻撃陣が彼より前に出て行くことができる。

クーニャとムベウモは、頼りになる背番号9番の選手を起点として機能してこそ、ユナイテッドのゴールを脅かす存在となる。ホイルンドは昨シーズン、この点で大きく期待を裏切ってしまった。ジョシュア・ザークツィーの方が、明らかにポストプレーの役割をこなすのがはるかに巧みだった。

Benjamin Sesko of RB Leipzig

FBRefが収集したデータによると、シェシュコは昨シーズンのリーグ戦で、ホイルンドの28回に対し、47回のプログレッシブ・キャリー(相手ゴールに向かって10ヤード以上、またはペナルティエリア内へとボールを運ぶこと)を記録している。プログレッシブ・パス(相手ゴールに向かって10ヤード以上、またはペナルティエリア内へとボールを動かすパス)に至っては、その差はさらに大きい。ホイルンドの18本に対し、シェシュコは46本だ。

シェシュコは昨シーズンのブンデスリーガで5アシストを記録したが、ホイルンドはプレミアリーグで1アシストも達成できなかった。また、シェシュコは1試合平均で26.2回ボールを受けたのに対し、ホイルンドは18.3回にとどまっている。

この文脈で考えると、エンベウモとクーニャの加入は、ユナイテッドがシェシュコを追い求める理由をより明確に示している。最近の過去を鑑みれば判断は保留すべきだが、ユナイテッドは移籍市場で少しばかり一貫した考えを見せているのかもしれない。

もしアモリムがホイルンドに固執していれば、元ブレントフォードとウォルバーハンプトンの人気選手たちが、過去10年間でオールド・トラッフォードにやってきた多くのスター選手と同じ道をたどる危険性があった。つまり、彼らの強みを引き出せない、不完全なチームに放り込まれてしまうことだ。

シェシュコは「開発途上の選手」だが、彼は複数の方法で貢献でき、ゴールを決められなくてもチームに役立つ可能性があるという点が重要な要素だ。ホイルンドはあっという間にユナイテッドの「笑い話」になってしまった。シェシュコを笑いものにするのは、もっと難しいだろう。

原文:Benjamin Sesko vs. Rasmus Hojlund: Are Man United making the same transfer mistake? Striker target assessed
翻訳:小鷹理人(スポーティングニュース日本版)

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Dom Farrell

Dom is the senior content producer for Sporting News UK. He previously worked as fan brands editor for Manchester City at Reach Plc. Prior to that, he built more than a decade of experience in the sports journalism industry, primarily for the Stats Perform and Press Association news agencies. Dom has covered major football events on location, including the entirety of Euro 2016 and the 2018 World Cup in Paris and St Petersburg respectively, along with numerous high-profile Premier League, Champions League and England international matches. Cricket and boxing are his other major sporting passions and he has covered the likes of Anthony Joshua, Tyson Fury, Wladimir Klitschko, Gennadiy Golovkin and Vasyl Lomachenko live from ringside.

小鷹理人 Masato Odaka

スポーティングニュース日本版アシスタントエディター。埼玉県出身。南アフリカW杯を機にサッカーに魅了され、欧州サッカーを中心に幅広く観戦。大学・大学院でスポーツマネジメントを専攻し、理論と実践の両面からスポーツを追求。フットサル部では全国大会出場経験あり。趣味はスポーツ観戦でサッカー、格闘技、MLBなど幅広く観戦。NBAは現在勉強中。