本サイトに掲載されているリンクから商品の購入やサービスの契約をされた場合、本サイトが収益を得ることがあります。

創立90周年の優勝狙う巨人、カギを握る猫の眼打線|プロ野球2024

菅谷齊

創立90周年の優勝狙う巨人、カギを握る猫の眼打線|プロ野球2024 image

巨人は球団創立90周年の優勝を目指している。阿部新監督の使命は大変なのだが、肝心の戦いも大変な状況で、序盤戦は“投髙打低”で苦戦続き。その実態は…。

芳しくない周年シーズンの成績

巨人球団の創立は1935年(昭和10年)。大日本東京野球倶楽部としてスタートし、米国遠征中にニックネームをジャイアンツ(巨人)とした。プロ野球は翌36年にペナントレースが始まったのだが、巨人は2度目の米国遠征を行っていたため不参加だった。37年から公式戦に参加している。

今年は球団創立90周年という節目のシーズンとあって、球団は当然「優勝」が目標である。実績豊富な原辰徳を、不振を理由に契約途中で監督を退かせ、阿部慎之助を新たに監督に据えたのも心機一転の表れだった。新監督で周年優勝、は阿部に対する“至上命令“といっていいだろう。

[AD] プロ野球グッズをAmazonでチェック!

過去の周年成績を振り返ると、意外にも芳しくない。下記の通りである。

周年年度監督順位勝敗勝率優勝
10周年1944年藤本英雄2位19勝14敗2分.576阪神
20周年1954年水原茂2位82勝47敗1分.636中日
30周年1964年川上哲治3位71勝69敗0分.507阪神
40周年1974年川上哲治2位71勝50敗9分.587中日
50周年1984年王貞治2位67勝54敗9分.554広島
60周年1994年長嶋茂雄1位70勝60敗0分.538巨人
70周年2004年堀内恒夫3位71勝64敗3分.526中日
80周年2014年原辰徳1位82勝61敗1分.573巨人

優勝は2度しかない。あとの6シーズンの優勝は中日3度、阪神2度、広島1度。セ・リーグ優勝のうち、長嶋だけが日本一(対西武、4勝2敗)に上り詰めた。原はクライマックスステージで阪神に負け、日本シリーズに進出していない。9連覇監督の川上が2度周年に対しながら優勝していない。過去のデータは優勝確率2割5分である。

猫の眼打線の象徴は“入れ替わり1番打者”

巨人は昨年まで3シーズン優勝から見放されている。阿部巨人は新生巨人を期待されてペナントレースに入った。3月29日の阪神との開幕戦でそれを示したのが1番の佐々木俊輔。ドラフト3位で日立製作所から入団した新人だった。開幕3連戦はいずれも先発出場を果たした。

ところがこのトップバッターに次々と新手が登場した。4戦目になると萩尾匡也が先発となった。慶大から入団した昨年のドラフト2位である。これも5試合目になると代わった。

4月6日のDeNA戦ではなんと浅野祥吾。高松商から昨年のドラフト1位入団で、阪神との指名くじ引き合戦の末に獲得したことで話題になった。翌日は吉川尚輝(中京大、8年目)となり、その次のヤクルト戦には重信慎之介(早大、9年目)といった中堅どころを起用する状態となった。このときまで5勝5敗。

11日から17日までの6試合は萩尾が戻って安定したかに見えたが、18日オコエ瑠偉(関東一-楽天、9年目)19日佐々木と日替わり。20日から3番を打っていた門脇誠(創価大、2年目)が配置転換、5試合に座った。27日のDeNA戦はさらに驚かせてくれた。15年目の長野久義が先頭打者として登場したのである。長野はHONDAから10年にドラフト1位で巨人入りし、広島を経て戻って来たベテランだ。その翌日、今度は17年目の丸佳浩(千葉経大付高-広島)が座った。

丸まで26試合で1番打者となったのは計9人。核弾頭が3試合に1人というのだから人材に苦労しているのが分かる。1番だけでなく打線そのもそに落ち着きがない。巨人OBから「打線は固定した方がいい」と“猫の眼打線”を危ぶむ声が出るほどだが、投手陣に比べ打力が弱すぎるのが序盤の巨人である。阿部の“必死の策戦”が見てとれる。

ちなみに昨年優勝の阪神は1番近本光司、2番中野拓夢のコンビを開幕戦から崩していない。

 

 


[AD] プロ野球グッズをAmazonでチェック!

菅谷齊

菅谷齊(すがや・ひとし)1943年、東京・港区生まれ、法大卒。共同通信で巨人、阪神、大リーグなどを担当。1984年ロサンゼルス五輪特派員。スポーツデータ部長、編集委員。野球殿堂選考代表幹事を務め三井ゴールデングラブ賞設立に尽力。大沢啓二理事長時代の社団・法人野球振興会(プロ野球OBクラブ)事務局長。ビジネススクールのマスコミ講師などを歴任。法政二高が甲子園夏春連覇した時の野球部員。同期に元巨人の柴田勲、後輩に日本人初の大リーガー村上雅則ら。現在は共同通信社友、日本記者クラブ会員、東京プロ野球記者OBクラブ会長。著書「日本プロ野球の歴史」(大修館、B5版、410ページ)が2023年度ミズノスポーツライター優秀賞を受賞。