WBO王座初防衛戦に臨む武居由樹とは|戦績・経歴|K-1王者から転向した異色ボクサー

神宮泰暁 Yasuaki Shingu

小座野容斉 Yosei Kozano

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9月3日(火)、井上尚弥vsTJ・ドヘニーのメインイベント前のセミファイナルとして、武居由樹(たけい・よしき)が、元世界王者の比嘉大吾を相手にWBO世界バンタム級王座初防衛戦に臨む。

K-1王者の肩書を持つキックボクサーからプロボクサーに転向した『異色のファイター』武居とは、いったいどんな男なのか。

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■異色のKOパンチャー、ボクシング転向理由は「井上尚弥」

武居由樹(たけい・よしき)は、1996年7月12日生まれの28歳。出身地は東京都足立区。身長は170cm、リーチは173cmの左ボクサーファイター。

ボクシングでの戦績以上に、彼を有名にしているのは、元K-1ファイター、それもWORLD GPスーパーバンタム級王者だったという前歴だ。

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キックからボクシングには、過去にも多くの選手が転向してきたが、近年最も多くの話題をさらったのが『神童』那須川天心(現・帝拳ジム所属)だろう。

だが武居は、那須川よりも先だった。那須川が2021年4月に転向表明し、実際にプロボクシングのライセンスを取ったのが2023年4月だったのに対し、武居は2020年12月13日、両国国技館でのK-1大会で転向を表明している。

武居がボクシング転向を決めたキッカケは、下半身の怪我の影響もあったが、井上尚弥がドネアを判定で破った2019年11月のワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)バンタム級トーナメント決勝だったという。

その決意を実現するべく、井上が所属する大橋ジムに入門し、世界三階級制覇の八重樫東トレーナーのもとで世界チャンピオンを目指すことにした。2021年3月には6回戦でプロデビューを飾った。那須川のプロデビューより約2年早い。

10歳の頃からキックボクシングを続けていた武居だが、都立足立東高校時代は、学校の部活としてボクシング部に所属しており、K-1時代もパンチには定評があった。

プロボクシングデビューから3戦連続で1ラウンドKO勝利。2戦目の相手はその時点で5戦5KOだったが、難なく倒した。

デビューから1年半足らずの2022年8月には、OPBF東洋太平洋スーパーバンタム級王座に挑戦し、チャンピオンのペテ・アポリナルを5回TKOで沈めてタイトルを奪取した。3度のダウンを奪っての完勝劇だった。

プロキャリア4年に満たない武居の名がボクシング界で浸透しているもうひとつの要因は、6戦目からの彼の役割だ。自身がボクシング転向を決意した理由であり、偉大なジムの先輩である「井上尚弥」のアンダーカードを任されるようになったのだ。

2022年12月13日、有明アリーナで井上 vs ポール・バトラー戦の前座としてOPBF王座初防衛戦を行い、同級10位のブルーノ・タリモを11回2分17秒TKOで仕留めた。

2023年7月25日には、有明アリーナで井上 vs スティーブン・フルトン戦のアンダーカードとしてフィリピンバンタム級王者のロニー・バルドナドとノンタイトル戦、3回にKO勝ちした。この試合では、バンタム級の契約体重で戦っていた。

そして、2023年11月にOPBFのスーパーバンタム級王座を返上した。

2023年12月26日、井上 vs マーロン・タパレス戦の前には、正式なバンタム級での初戦として、元WBCコンチネンタルバンタム級王者のマリオ・ディアスと対戦、2回2分23秒KO勝ち。鮮やかなボディーブローだった。

2024年5月6日、日本ボクシング界34年ぶりの東京ドーム興行。井上 vs ルイス・ネリ戦の前にWBO世界バンタム級タイトルマッチに挑んだ。ベテラン王者ジェイソン・モロニーを相手に中盤戦までは圧勝ムード、後半は一転してモロニーの粘りに苦しんだが、最後は判定勝ち。ついに世界王者に到達した。

憧れの井上の「露払い」を務めるようになり、そして、かつて井上が保持していた世界タイトルを手にした武居にとって、今回5度目のアンダーカードは、日本人同士の世界戦。しかも相手は元WBC世界フライ級王者の比嘉大吾だ。

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KO必至の強打者対決だが、メインイベントの井上に勝利のバトンを渡す役割はここでも変わらない。


■那須川天心との元キックボクサー対決はあるか

武居は現在9勝8KO。キックからの転向組の中では出世頭となっている。

フィニッシュブローは、飛び込んで打つ右フック。スポーツ誌『Number』のインタビューで、武居は、一緒に練習していた総合格闘技の選手の動きを真似たものだと語っている。

武居は母子家庭で育った。「やんちゃなところ」があったため、キックボクシングジム「POWER OF DREAM」の古川誠一会長の家に住み込みながら、キックを始めた。小学生、10歳の頃だった。

10年前の2014年11月にKrushでキックボクサーとしてプロデビュー。デビュー戦は白星だったが、第2戦、第3戦で連敗。しかし2016年の第4戦目以降から連勝街道を走り始める。

2017年4月には、K-1 WORLD GP 第2代スーパー・バンタム級王座決定トーナメントで優勝。同年9月と11月にもKO勝利を収め、2017年のK-1年間MVPに輝いた。この年8月には、武尊とボクシングルールによるエキシビションマッチも戦った。

2019年6月の「K-1 WORLD GP 2019 K-1スーパー・バンタム級世界最強決定トーナメント」では、決勝までの3戦をすべてKO勝ちした。

キック時代の通算成績は25戦23勝2敗17KOだった。ボクシング転向後も含めると、武居は8年間リングの上で負けていない。

武居は体格的に那須川とほぼ同じだ。ボクシングでの階級も同じ。WBO世界バンタム級王者となった武居が勝ち続ければ、キック出身の2人が、そう遠くない将来に、ボクシングの世界王座を巡って戦う日が訪れるかもしれない。


■武居由樹のプロフィールとプロ戦績

  • 出身地:東京都足立区
  • 生年月日:1996年7月12日(27歳)
  • 身長:170cm
  • リーチ:173cm
  • キックボクシング総試合数:25
  • キックボクシング戦績:23勝(16KO)2敗
  • ボクシング総試合数:9
  • ボクシング戦績:9勝(8KO)0敗
  • キックボクシング獲得タイトル
    WINDY KICKスーパーフライ級王座
    初代Krush -53kg王座
    第2代K-1 WORLD GPスーパーバンタム級王座
    K-1 WORLD GPスーパーバンタム級世界最強決定トーナメント優勝
  • ボクシング
    第46代OPBF東洋太平洋スーパーバンタム級王座(返上)
    WBO世界バンタム級王座

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神宮泰暁 Yasuaki Shingu

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日本編集部所属。ボクシング・格闘技担当編集者。

小座野容斉 Yosei Kozano

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東京都出身 早稲田大学政治経済学部卒。1989年毎日新聞に入社、写真部のカメラマンとして、春・夏の高校野球、プロ野球、ラグビーなどを撮影。デジタルメディア局に異動後は、ニュースサイト編集の傍ら、「K-1」などの格闘技、フィギュアスケート、モータースポーツも撮影してきた。アメリカンフットボールは、個人のライフワークとして、トップリーグの「Xリーグ」を中心に年間約70試合を撮影・取材。2020年2月毎日新聞を退社後は、ウェブ「アメリカンフットボール・マガジン」で約700本の記事を配信した。また、「NFLドラフト候補名鑑」出版にも携わった。日本スポーツプレス協会(AJPS)会員。