スポーティングニュース選出パウンド・フォー・パウンドのトップ12ボクサーたち

Tom Gray

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世界で最も優れたパウンド・フォー・パウンド・ファイターを選ぶとなると、意見はさまざまで、批判を免れることはできない。

しかし、スポーティングニュース(The Sporting News)は、あえてこの伝統的な争いに加わり、現時点のボクシング最強ランキングを制定する。

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パウンド・フォー・パウンドのリストを作成することほど格闘技ファンの間で議論を巻き起こすものはほかにない。ボクシング界は偉大なチャンピオンたちで溢れている。ファンは全員がそれぞれに贔屓のボクサーがいる。誰かがあるファイターに否定的な言動をするだけで、たちまちのうちにソーシャルメディアが炎上することになる。

この4か月間、世界中でパウンド・フォー・パウンドのトップに名前が取り沙汰される多くのボクサーたちが試合を行った。ほかを凌駕する達成もあれば、私たちが目を見張った試合もあった。このスポーツを取り巻く状況は完璧とは呼び難い。しかし、その将来は依然として明るい。

スポーティングニュースでは6人のメンバーで構成される格闘技専門記者たちの意見をまとめ、独自のパウンド・フォー・パウンドのリストを作成してみた。これが現在、私たちが考える、階級を越えた世界最強ボクサーのトップ12人だ。このすべてに合意する人はきっといないだろう。それでも構わない。私たちには全力を尽くした自信があるし、すべての人に合意されることほど退屈なものはないからだ。

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1. オレクサンドル・ウシク

  • 戦績:20勝0敗(13KO)
  • 現在保有するタイトル:WBA・IBF・WBO世界ヘビー級、『TheRing』誌ヘビー級

元オリンピック金メダリストにして、かつてのクルーザー級4団体統一王者、そして現在の世界ヘビー級統一王者、それがオレクサンドル・ウシク、35歳だ。現在のボクシング界で間違いなく最高のテクニシャンであり、すべてを兼ね備えたオールラウンダーでもある。類まれなパンチのスピード、素早いフットワーク、驚異的な運動能力、そして抜群のボクシングIQを持つウクライナの怪物は、そのキャリアで特筆されるべき勝利をいくつも挙げてきた。マイリス・ブリエディス戦(12回判定)、ムラト・ガシエフ戦(12回判定)、そしてアンソニー・ジョシュアとの2戦(12回判定、12回スプリット判定)である。

次の試合:2023年にタイソン・フューリーとのヘビー級4団体統一王座戦が取り沙汰されている。

2. 井上尚弥

  • 戦績:24勝0敗(21KO)
  • 現在保有するタイトル:バンタム級世界4団体統一王者

ボクシング界において「ザ・モンスター」より相応しい称号がほかにあるだろうか。井上尚弥は現在29歳。プロ入りして以来、強力無比のパンチ力、凄まじいスピード、そして抜群のテクニックを見せつけてきた。3階級で世界を制した日本のスターはこれまでにエマヌエル・ロドリゲス(2回TKO)、そしてノニト・ドネアを2度(12回判定、2回TKO)破っている。

12月13日には井上はポール・バトラーを寄せ付けず(11回TKO)、バンタム級4団体統一王者の勲章を得た。

次の試合:122 パウンド(スーパーバンタム級)へ階級を上げ、 WBC、WBO同級王者スティーブン・フルトンと対戦することが最も期待されている。

関連記事:井上尚弥はパウンド・フォー・パウンドで再びトップとなるか? PFPライバルの動向は?

3. テレンス・クロフォード

  • 戦績:39勝0敗(30KO)
  • 現在保有するタイトル:WBO世界ウェルター級

ネブラスカ州オマハ出身のテレンス・クロフォードは、現在のボクシング界において最も多くの勲章と才能を持つチャンピオンのひとりだ。「Bud(新芽)」の通称で呼ばれるクロフォードは、まずライト級で世界チャンピオンになり、続いて140パウンド(スーパーライト級)で4団体統一王者となった。2018年以来、現在35歳のクロフォードはウェルター級を主戦場にして、依然として高いレベルのパフォーマンスを発揮している。

特筆されるべき勝利には、リッキー・バーンズ戦(12回判定)、ユリオルキス・ガンボア戦(9回TKO)、ビクトル・ポストル戦(12回判定)、そしてショーン・ポーター戦(10回TKO)が挙げられる。

次の試合:WBAスーパー・WBC・IBF世界ウェルター級王者エロール・スペンス・ジュニアとの4団体統一王座戦が期待されるが、その実現可能性は薄い。

4. カネロ・アルバレス

  • 戦績:58勝2敗2分け(39KO)
  • 現在保有するタイトル:スーパーミドル級世界4団体統一王者

「カネロ」ことサウル・アルバレスはボクシング界最大のスターだ。

かつてジュニアミドル級、ミドル級、そしてライトヘビー級でチャンピオンになったこのメキシコ人スターは、現在168パウンド(スーバーミドル級)のすべてのベルトを保持している。カネロはアマチュア時代には目立った実績がなく、現在のオールラウンドな技術はプロになってから磨かれたものだ。今年5月のディミトリー・ビボル戦で敗北を喫したが、それでも誰もが羨む戦績を誇る。その主な勝利だけでも、エリスランディ・ララ戦(12回スプリット判定)、ミゲール・コット戦(12回判定)、ゲンナジー・ゴロフキンとの2戦(12回判定、12回判定)、ダニエル・ジェイコブス戦(12回判定)、そしてセルゲイ・コバレフ戦(11回TKO)など、まさに枚挙の暇がない。

次の試合:手首の手術からの回復に努めているが、5月5日(シンコ・デ・マヨ=メキシコの祝日)に復帰戦を行う予定。

5. エロール・スペンス・ジュニア

  • 戦績:28勝0敗(22KO)
  • 現在保有するタイトル:WBA・WBC・IBF世界ウェルター級

エロール・スペンス・ジュニアは、あり余るほど多彩な武器を持つテクニシャンのサウスポーである。およそリングのなかでできないことはない。32歳になったスペンスは近い距離でも離れた距離で戦うことができる。そしてパンチのバラエティは比類がない。147パウンド(ウェルター級)の4つのベルトのうち3つを保持し、「The Truth(真実)」の通称で呼ばれる。多くの人々がウェルター級世界最強だと考えるボクサーだ。

特筆されるべき勝利には、ケル・ブルック戦(11回KO)、ショーン・ポーター戦(12回スプリット判定)、ダニー・ガルシア戦(12回判定)、そしてヨルデニス・ウガス戦(10回TKO)がある。

次の試合:WBC指名挑戦者キース・サーマンとの対戦が義務付けられている。

6. ディミトリー・ビボル

  • 戦績:21勝0敗(11KO)
  • 現在保有するタイトル:WBA世界ライトヘビー級

ディミトリー・ビボルはついこの前まで無名の存在だった。しかし、今では誰も忘れることができない名前だ。

31歳のビボルは長い間ライトヘビー級のタイトルを保持していたが、ボクシング界のスーパースターであるカネロ・アルバレスの対戦相手に選ばれると、圧倒的不利だと予想されていた。しかし、物事はその通りには進行しなかった。全12ラウンドを通して、テクニシャンのビボルが見事なアウトボクシングでメキシコ人スターを翻弄し、いきなりパウンド・フォー・パウンドの勢力地図を塗り替えてしまったのだ。11月にはこのロシア人テクニシャンはそれまで無敗だったヒルベルト・ラミレスをも下した。ジャン・パスカル(12回判定)とジョー・スミス・ジュニア(12回判定)にも勝利している。

次の試合:カネロとの再戦が期待されているが、ビボル自身は175パウンド(ライトヘビー級)のタイトル統一戦を望んでいる。

7. タイソン・フューリー

  • 戦績:33勝0敗1分け(24KO)
  • 現在保有するタイトル:WBCヘビー級

かつて多くの人が「ジプシーキング」の名で呼ばれるタイソン・フューリーは永遠に消えたと感じていた。2015年11月から2018年6月までボクシングの世界から姿を消していたからだ。フューリーが演じた最初の奇跡は、体重を63.5 キロ減らし、そしてヘビー級世界チャンピオンに返り咲いたことだ。

この英国出身ボクサーが成功した主な理由として、その類まれな体格がしばしば挙げられる。しかし、それは間違った認識だ。フューリーのボクシングIQとファイティング・スピリットは極めて高い。キャリアで最も特筆されるべき勝利には、ウラジミール・クリチコ戦(12回判定)とデオンテイ・ワイルダーとの2戦(7回TKO、11回KO)がある。

次の試合:ウシクとのヘビー級4団体統一王座戦が期待されている。そして長い間待ち望まれていたアンソニー・ジョシュアとの対戦が消滅したとすれば悲しいことだ。

8. デビン・ヘイニー

  • 戦績:29勝0敗(15KO)
  • 現在保有するタイトル:ライト級世界4団体統一王者

現在のところ、「The Dream(夢)」の通称で呼ばれるデビン・ヘイニーは、まさしく夢のなかにいる。

最大かつ最高の試合を追い求めたあとで、ヘイニーはついにオーストラリアでジョージ・カンボソス・ジュニアとの4団体統一戦にこぎつけた。カンボソスはそれまでに統一王者だったテオフィモ・ロペスを退けていた。24歳のヘイニーはカンボソスを圧倒し(12回判定)、主要3団体時代の1980年代のパーネル・ウィテカー以来となるライト級のアンディスピューテッドチャンピオン(絶対王者、比類なき王者)となった。ヘイニーのスピード、技術、防御の判断力、そしてノウハウは最高レベルにある。

それ以外に特筆されるべき勝利は、ホルヘ・リナレス戦(12回判定)、ジョセフ・ディアス・ジュニア(12回判定)、そしてカンボソスとの再戦(判定12回)がある。

次の試合:避けられない相手であるワシル・ロマチェンコとの対戦が2023年前半に期待されている。

9. ジョシュ・テイラー

  • 戦績:19勝0敗(13KO)
  • 現在保有するタイトル:WBO世界スーパーライト級、『TheRing』誌スーパーライト級

スコットランド出身のジョシュ・テイラーはスピードが持ち味だ。そしてワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)のおかげもあって、駆け足でスターダムにのし上がった。31歳のテイラーはかつて無敗を誇った3人の世界チャンピオンを立て続けに撃破し、プロ入り後わずか18戦目にしてスーパーライト級の4団体統一王者となったのだ。

ジャック・カテラル戦でのパフォーマンスは悪く、物議をかもしたスプリット判定で勝利した。現在のテイラーは低下した評価を取り戻そうとしている。特筆されるべき勝利は、イバン・バランチェク戦(12回判定)、レジス・プログレイス戦(12回判定)、そしてホセ・ラミレス戦(12回判定)がある。

次の試合:カテラルとの再戦が2023年前半に予定されている。

10. シャクール・スティーブンソン

  • 戦績:19勝0敗(9KO)
  • 現在保有するタイトル:なし

25歳のシャクール・スティーブンソンは、現在のところ世界タイトルをひとつも保持していない。だからと言って、侮ってよいボクサーではない。元WBO世界フェザー級、元WBC・WBO世界スーパーフェザー級統一王者であり、その才能は飛び抜けている。そして層が厚いライト級に階級を上げようとしている。リオデジャネイロ五輪バンタム級銀メダリストでもあるスティーブンソンは、プロ入り後すぐに優れた適応力を見せた。穴のない完璧なファイターの見本である。

スティーブンソンの全盛期はこれからやってくるだろう。しかし、このニュージャージー生まれのスターはすでにいくつかの印象的な勝利を挙げている。ジャメル・ヘリング戦(10回TKO)、オスカル・バルデス戦(12回判定)、そしてロブソン・コンセイソン戦(12回判定)がその主なものである。

次の試合:ライト級の公式デビュー戦を2023年前半に予定している。

11. ファン・フランシスコ・エストラーダ

  • 戦績:44勝3敗(28KO)
  • 現在保有するタイトル:WBC世界スーパーフライ級、『TheRing』誌スーパーフライ級

メキシコ人スターであるファン・フランシスコ・エストラーダは、ガッツあふれる熱血ファイトで母国のファンを熱狂させる。元フライ級の統一王者である。「El Gallo(おんどり)」の通称を持つエストラーダは、115パウンド(スーパーフライ級)に階級を上げ、そこでも目覚ましい成功を手にしている。

32歳とけっして若くはないが、今すぐに引退しても殿堂入りに相応しいだけの勝利を重ねてきた。ブライアン・ビロリア戦(12回スプリット判定)、シーサケット・ソー・ルンビサイ戦(12回判定)、そしてローマン・ゴンサレスとの2戦(12回判定、12回スプリット判定)など、いくらでも例に挙げることができる。

次の試合:友人でもありライバルでもあるローマン・ゴンサレスとの第4戦が噂されている。戦績はエストラーダの2勝1敗。

12. ジャーメル・チャーロ

  • 戦績:35勝1敗1分け(19KO)
  • 現在保有するタイトル:スーパーウェルター級世界4団体統一王者

すべてのファイターたちと同じように、チャーロは激しくも戦えるし、冷静にも戦える。「Iron Man(アイアンマン)」と呼ばれ、一度スイッチが入ると誰にも止めることはできない。テキサス州出身の32歳は優れたボクサー・ファイターであり、芸術品のようなパンチと強固なファイティング・スピリットを併せ持つ。適応力にも優れている。トニー・ハリソンに不可解な判定で敗れ、ブライアン・カスターノにも同じく不可解な判定で引き分けたが、2人とも再戦でノックアウト勝ちしている。

これまでのキャリアで最高の勝利は、エリクソン・ルービン戦(1回KO)、ジェイソン・ロサリオ(8回KO)、そしてカスターノ戦(10回KO)を挙げることができる。

次の試合:2023年1月28日、無敗のオーストラリア人スター、ティム・チューと対戦する予定。

原文: The Sporting News: Boxing top 12 pound-for-pound list
翻訳:角谷剛
編集:スポーティングニュース日本版編集部

 


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Tom Gray joined The Sporting News in 2022 after over a decade at Ring Magazine where he served as managing editor. Tom retains his position on The Ring ratings panel and is a full member of the Boxing Writers Association of America.