ホワイトハウスは、ドナルド・トランプ大統領が現地24日(木)、大学生アスリートに対する第三者からの報酬の支払いを禁止する大統領令に署名したと発表した。
この命令はまた、「非営利スポーツを維持するため」に学生アスリートの地位を明確にするよう、労働省長官および全米労働関係委員会(NLRB)に対して指示をしている。
プレイに対する対価の支払いを禁止する権限を実際にどの機関が担うかは不明だが、この大統領令は大学生アスリートに対する「入札戦争」を部分的に廃止することを目的としており、「ブランド広告など、第三者がアスリートに提供する合法かつ公正な市場価値のある報酬」は適用対象外となっている。
ここでは、トランプ大統領が署名した「ペイ・フォー・プレイ(プレイの対価支払い)」の禁止を含む大学スポーツに関する新たな大統領令について知っておくべき点をまとめる。
トランプ大統領による大学スポーツに関する大統領令の中身は?
木曜日、ホワイトハウスは「ドナルド・J・トランプ大統領が大学スポーツを救う」と題したファクトシートを発表し、大統領が署名した大統領令の詳細を明らかにした。この法案の目的は、「学生アスリート、大学スポーツの奨学金やオリンピックや非営利プログラムを含む機会、そして大学スポーツというアメリカ独自の制度を保護すること」と説明されている。
その直後、ホワイトハウスは大統領令の全文を公表した。
大統領令には、大学スポーツに関するいくつかの規則が含まれており、最も重要なものは選手に対する「第三者によるプレイに対する対価の支払い」の禁止だ。ただし、この禁止はブランドスポンサー契約を含め、第三者が選手に提供する「正当で公正な市場価値のある」報酬には適用されない。
ファクトシートによれば、トランプ大統領の大統領令に盛り込まれた大学スポーツに関するその他の要件は以下の通りだ。
- この命令は、大学女子スポーツおよび非収益スポーツにおける奨学金と競技の機会の「維持」と「拡大」を義務付けている。
- 大学と大学生アスリート間で認められる収益分配は、「女子スポーツおよび非収益スポーツを保護する形で実施される」ことが義務付けられている。
- この命令は、「非収益スポーツ」および大学スポーツが提供する機会を保護するため、「学生アスリートの地位を明確にする」ことを労働省長官および全米労働関係委員会に対して求めている。
- この命令は、「学生アスリートの権利を保護する」ことを目指し、「終わりのない、衰弱させるような独占禁止法およびその他の法的争議」を終わらせるために「適切な措置」を講じるよう、司法長官および連邦取引委員会に対して求めている。
- この命令は、「大学スポーツがアメリカ人選手育成において果たす役割を保護する」ことを目標として、「米国オリンピック・パラリンピックチームおよびその他の組織と協議する」ことを大統領国内政策担当補佐官およびホワイトハウス広報連絡室長に対して求めている。
大統領令のファクトシートでは、トランプ大統領が「大学スポーツの重要な役割」を認識しているとした上で、将来に向けた法的課題に対処する「緊急の必要性」を強調している。ファクトシート内では、これらの課題の一部として「大学スポーツの基本ルールを廃止しようとする訴訟」や「アメリカンフットボールとバスケットボールにおける私的寄付による報酬の拡大が他のスポーツへの資源配分を阻害し、競争の均衡を損なっている現状」を挙げている。
NIL(名前、肖像、イメージの権利)に関しては、ファクトシートでは「選手にとって正当な第三者によるNILの機会」が「プレイの対価に対する入札競争」を引き起こし、その結果「最高の選手を購入できるチームの寡頭制」を生じさせていると指摘している。
なお、この命令で禁止される「プレイの対価支払い」の規則を執行する主体は不明だ。
NCAA(全米大学体育協会)のチャーリー・ベイカー会長は木曜日、この大統領令に関する声明を発表した。
「NCAAは、学生アスリートのための健康と福祉の福利厚生を義務化し、奨学金を保証するなど前向きな変更を実施し、大学スポーツが直面する多くの課題に対処しています。しかし、大学スポーツに対する脅威の一部は連邦立法で効果的に対処できるものであり、協会は学生アスリートや大学と協力し、議会と行政とともに超党派的な解決策を推進していきます」と、ベイカー氏は声明の中で述べている。
「協会は、大学スポーツが数百万人の若者にもたらす人生を変える機会についてトランプ政権が重視していることを評価しており、学生アスリート、議会内の超党派連合、およびトランプ政権と協力して、今後数年にわたり大学スポーツの向上に努めていきます」
先月、下院とNCAAの間の和解が正式に承認され、大学がアスリートと直接収益を分配する道が開かれた。これには28億ドル(1ドル147円換算で約4116億円)の遡及支払金も含まれている。
ユース、高校、大学スポーツ、並びにNIL関連の情報を報じる『On3』のピート・ナコス氏は今回の大統領令を受けて、NCAAが「連邦法制定を働きかけている」として、2つの懸案事項を指摘した。
Two key questions that need to be answered:
— Pete Nakos (@PeteNakos_) July 24, 2025
+ Who enforces the prohibition on pay-for-play
+ What will the penalty be for violating the order https://t.co/rCYT1gkqxu
(答えが必要な2つの重要な疑問:
+ プレイへの対価の支払いを禁止する規則を誰が施行するのか
+ 命令に違反した場合の罰則は何か)
『Yahoo Sports』のロス・デレンジャー氏もまた、ベイカー氏とNCAAの「焦点」は、大統領令ではなく、より恒久的な解決策としての議会立法であることは変わっていないと報じている。
原文:Donald Trump college sports executive order, explained: How latest news impacts NCAA athletes, universities
翻訳・編集:石山修二(スポーティングニュース日本版編集部)