NBA歴6年を誇る渡邊雄太にとってBリーグでの1年目となった今シーズンはケガとの戦いの連続となった。レギュラーシーズンでは計25試合の欠場を余儀なくされ、35試合(先発31)の出場にとどまり、平均13.3得点、5.5リバウンドの成績。CS(チャンピオンシップ=プレーオフ)では3試合(先発0)の出場で5.0得点、5.0リバウンドの成績で、チームはCS優勝を果たした宇都宮ブレックス相手にセミファイナルで1勝2敗と敗れ、シーズンを終えていた。
渡邊は5月31日、ららアリーナ東京ベイにて行なわれた「2024-25シーズン 千葉ジェッツ ブースターフェス」に参加。イベント終了後に取材に応じ、今シーズンを振り返った。
ここでは合同で行なわれた会見形式の取材での一問一答を紹介する(一部、同様の質問には要約箇所あり)。
「来シーズンは健康を保つことを意識しなければ」
――まずは、たくさんのブースターが来たイベントについて。
「悔しい負け方で終わっても、最後には1万人のお客さんが集まってくれて、最後まで僕たちに力をくださったみなさんなので、本当に感謝しています。そのぶん、みなさんを日本一にしたかった気持ちがあるので、その分は来年、と思います」
――初めてのBリーグでのシーズンを振り返って、よかった点、来シーズンに向けての改善点は?
「健康状態がよかった時は僕としても、チームとしてもいいプレーができていましたが、ケガ明けなどは、極端に(プレーの質が)落ちているのは間違いなく見て取れる現象だったので、今シーズンも言ってはいたのですが、来シーズンは健康をしっかり保つことを意識しなければならない点だと思います。
1年間を通して強いチームづくりをしていかなければならないところで、今シーズンは僕だけじゃなく、いろんな選手の離脱が多かった。いいチームというのは全員が健康で、強いチームづくりを1年を通してできるのがいいと思っているので、全員で気をつけながら、ゲームに出ていければと思います」
「代表活動のあるなしによって、自分の時間の使い方は変わってくる」
――来シーズンに向けて、具体的にどのように準備を進めていこうと考えていますか。
「この夏の予定については、まだ決まってない部分が正直、あります。当然、代表活動はありますが、ただ、代表チームがどういうメンバーでいくのか、まだ話していません。ただ、若手中心で行くのなら、僕は久しぶりの、もしかしたら初めてのちゃんとしたオフシーズンになると思うので、健康が大事なので、しっかり1年間、常に走り続けられるような体づくりをしていかなければと考えています。
いずれにしても代表活動のあるなしによって自分の時間の使い方は変わってきます。代表に参加するのであれば、7月頭くらいから8月のアジア杯に向けて準備することになるでしょうし、参加しないのであれば、約3カ月近くオフがあるなかで、若手の見本になることはもちろん、自分自身も学んでいる最中なので、(荒尾)岳さんとか、(西村)文男さん(といったベテラン)から、オフの過ごし方を学んでいければと思います」
――今季は守備面ではポジションに関係なく力を発揮したと思いますが、オフェンスでは13.3得点、3ポイント成功率30%は渡邊選手本来の力ではない成績だったと思いますが、具体的にどの部分を伸ばさなければと考えていますか。
「やっぱり全体的にプレーの精度は上げていかなければと考えています。シュートセレクションだったり、自分がダメな部分を見直して、やっていかなければと思っているので、全体的なスキルアップ、シュート力のアップは必要だと考えています」
「あらためて日本バスケの盛り上がりの凄さを感じた」
――これまでBリーグを観戦したり、国内で代表戦を経験されていますが、この1年、Bリーグに身をおいてみて、あらためてBリーグの盛り上がりについては?
「当然代表活動を通して感じていましたが、あらためて日本のバスケの盛り上がりの凄さを感じました。このららアリーナには毎試合1万人近くのお客さんが駆けつけてくれてアウェーでもほとんどが満員の会場でプレーできました。
僕が11年前、高校生の頃には想像もできなかったし、代表戦でもなかなかチケットが売れなかったような状況だったなかで、リーグとしてこれだけすばらしいリーグを作り上げた関係者、選手、コーチには感謝していますし、今は自分もそのリーグのなかにいるひとりとして、あと何年プレーするかはわからないですけど、引退する時に、Bリーグ、日本のバスケットにしっかり貢献できたと言えるようにこれから頑張っていきたいです」
――Bリーグのレベルについては?
「レベルもすごく高いと思いますし、外国籍の選手でもレベルの高い選手が日本でプレーしたいと言っているし、そういう選手がレベルを上げています。日本の選手についても、代表には入らなくても、こんなにうまい選手がいたんだと、僕も新しい発見がありました。(そのなかで)自分も負けないよう、悔しい思いもたくさんしたので、しっかり優勝で終われるようにしていきたいなと思っています」
「あまりにプレーできない期間が長すぎた」
――NBAを離れる理由にメンタル面で厳しい部分があったと話されていましたが、フィジカル面(ケガ)の部分とは別に、メンタル面はどのような1年でしたか。
「正直、よくはなかったかなと。それはバスケットボール自体がどうこうではなく、あまりに(ケガで)プレーできない期間が長すぎたからです。その期間の治療であったり、リハビリは大変でしたし、今シーズン、一番、自分って若くないなと感じたのは、コートに戻ってからパフォーマンスが上がってくるまでの時間が、今まで以上にかかっていたので、今年で31歳、バスケ選手としては若くない歳であることを痛感しました。
たくさん学びももらえた1年ですが、楽しい時間はあったのですが、心の底から1年を通して楽しめたかと言われれば、楽しめていなかったが今の自分の課題、気持ちなので、来シーズンは60試合しっかり出て、その瞬間瞬間を楽しめればと思います。
「宇都宮さんは僕らの想像を絶するような状況のなかで一丸となり、最後は優勝。それに対してリスペクト」
――CSファイナル(宇都宮ブレックスvs.琉球ゴールデンキングス)について。(宇都宮の)比江島慎選手の第3戦終盤の活躍を見て、ご自身のなかでどういう思いを抱きましたか。
「第1、2戦はスタッツで確認して、第3戦は映像で観戦しましたけど、彼(比江島)らしいプレーを見せてくれたと思いますし、彼らに負けた身のチームとしては悔しさも感じていました。ただ、バスケットボールよりも、この世界にはたくさん大事なことがあるなかで、宇都宮さんは今シーズン、どのチームよりも大変な思いをして、苦しい時間をみんなで乗り越えてやってきて、僕らの想像を絶するような状況のなかで常にチームが一丸となって、最後はああいう形で優勝をして終えれたんで、そこに関しては、本当すごいリスペクトな気持ちと、チャンピオンにふさわしい、今年一番強かったチームだったなというふうに感じました。
だからといって、僕ら含めて他のチームが負けていい理由はそこではないんで、僕らは僕らで、やっぱり勝っていかなきゃいけないなかで、来シーズンは自分たちのやるべきことをやって、ああいうチームをしっかり倒せるようにしていきたいと思います」
渡邊は尽誠学園高(香川)を卒業した2013年に渡米し、プレップスクール(米国の大学受験準備校)を経てジョージワシントン大で4年間プレー。卒業後、フリーエージェントとして2018年にメンフィス・グリズリーズとツーウェイ契約を結び、日本人2人目のNBA選手となった。その後、6年間NBAでプレーし続け、今シーズンからBリーグでプレーしてきた。