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千葉ジェッツ・富樫勇樹が2024-25シーズンを総括「千葉に来て以降、一番ケガ人に苦しんだシーズン」「無冠ですけど、ほぼ同じメンバーで来季戦えますから」

牧野豊 Yutaka Makino

千葉ジェッツ・富樫勇樹が2024-25シーズンを総括「千葉に来て以降、一番ケガ人に苦しんだシーズン」「無冠ですけど、ほぼ同じメンバーで来季戦えますから」 image

©︎Yutaka Makino

激動のシーズンを振り返った千葉ジェッツ・富樫勇樹

富樫勇樹にとって、Bリーグ9年目となった今季は、少しほろ苦いものとなった。シーズン開幕前にはNBA歴6年を誇る渡邊雄太やDJ・ホグら長身オールラウンダーの加入により高い評価を受けていた千葉ジェッツだったが、開幕すると主力が次々と戦線離脱。富樫本人も2025年4月5日のアルバルク東京戦で左足首を捻挫し、それまで約8年続いていたBリーグでの連続試合出場は392で止まった。

それでもCS(チャンピオンシップ=プレーオフ)前に戦線復帰。万全の状態ではなかったものの、CSセミファイナルではCS優勝を果たした宇都宮ブレックス相手に1勝2敗と競り合った。

HC(ヘッドコーチ)がトレヴァー・グリーソンに代わりシステムの変更などがあるなか、レギュラーシーズン50試合出場で平均13.9得点、5.0アシスト。3P成功率は試投数が前シーズンより3分の2になったとはいえ、成功率は31.2%から38.8%とアップさせるなど、存在感は変わらぬものだった。

富樫は5月31日、ららアリーナ東京ベイで行なわれた「2024-25シーズン 千葉ジェッツ ブースターフェス」に参加。イベント終了後の取材で、今シーズンを振り返ってもらった。

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「千葉に来てから一番ケガ人に苦しんだシーズン」

――今季は主力選手にケガ人が続き、ご自身もコンディションが苦しい時期などもありましたが、あらためてシーズンを振り返っていかがですか。

Bリーグが始まって、その前の(2015)年に千葉に来てから一番(チームが)ケガ人に苦しんだシーズンだったなと思います。でもそれも、その年を左右する大きな実力というか、それも一つのバスケットの要素ではあるので、チームとしてもそうですし、各選手がそこでコントロールしきれなかった部分もあったと思います。

ただ、シーズンを通して見れば無冠ですけど、また新たなシーズンがありますし、(今季と)ほとんど大きく変わらないメンバーで戦えますから。

――シーズン終了後、早い段階で多くの選手の契約継続が発表されています。

そうですね。(小川)麻斗はレンタルという形ですけど(京都ハンナリーズへレンタル移籍)、主力の日本人選手がほとんど残りますし、同じメンバーでプレーできることは絶対に強みになると思うので、この1年間やってきたことを、イチからではなく、しっかり積み上げた状態からまたやれたらいいなと思っています。

「本当にあの状況からしたら、まったく悪い数字じゃない」

――今季の開幕時の先発5人がそのまま揃ってプレーできた試合は、1ケタしかないですし、渡邊選手、ジョン・ムーニー選手やホグ選手も長期離脱、それが重なったりズレたりで、何かパズルがはまりそうなときに誰かがケガしてっていうのがずっと続いてきた印象でした。そのなかでも一番きついなと感じたのはいつ頃ですか。

やっぱり、ムーン(ムーニー)とDJの二人が同時に抜けているときは、道がないというか、なかなかいろんな部分ですごく大きかったなと思いました。でも自分や雄太が抜けている時には連勝を続けていましたし、その辺はうちの選手層なので自信を持てる部分ではありました。

その意味ではいろんな選手が代わりにしっかりプレーして、(菅野)ブルースはケガする直前までプレーした経験は必ず生きると思うし、(瀬川)琉久もそうだし、田代(直希)もそうだし、本当にいろんな選手が活躍できたと思うので、しっかり来シーズンに向けての準備をすることが大切かなと思います。

――これだけケガ人が続いたなかで、レギュラーシーズン42勝18敗、CSはセミファイナル。どう評価されますか。

いや、正直、本当にあの状況からしたら、まったく悪い数字じゃないと思います。もちろん、CSで宇都宮(ブレックス)と1点、2点の争いをするときに、ベストメンバーで戦えたのがシーズンで数試合しかなかった部分が、(勝敗を分けた差として)やっぱり出たなっていうのは感じますけど、最後は僕と雄太があの(よくない)コンディションでCSに臨みながら(優勝を狙える)可能性はずっとあったので、しっかりポジティブに捉えて、自信を持って来シーズンで臨めると思います。

「地味に痛みを感じながらプレーする時期が長く続いていた」

――今シーズンはご自身も欠場を余儀なくされた捻挫以外でも、ケガやコンディション面で苦しい時期がありました。ご自身としてはいかがですか。

今シーズンは、ちっちゃいケガが中盤にありました。地味に痛みを感じながらプレーする時期が長く続いていた感じです。それはここ数年ではなかったことです。

捻挫みたいにはっきりとしたケガではないレベルのケガというか。でもそれも、相手にヒットされたり、接触があった時に痛めるなど、自分で未然に防ぐことができないものが多いので、どうしようもない部分もあるんですけど。

――それは、プレー時間が制限されていた12月くらいですかね。

そのあたりですね。

――そういう状況にどのように対応するものなのですか。

土曜、日曜、水曜と試合が続くので、なかなかそこはしっかり休むってことはできなかったですけど、そういうスポーツなので。

「システムどうこうより、監督からの信頼。それに勝るものはなかった」

――トレヴァー・グリーソンHCが導入したフレックスオフェンスは、オフボール(ボールのない場所)のスクリーンを多用しながらパスをつなぎ、特定の選手に頼らずオープンになった選手で得点を重ねるスタイルです。そのなかで、これまで千葉の代名詞とも言える、特にムーン選手とのピック&ロールに代表されるような富樫選手のボールキャリーから始まるオフェンスの機会は減りました。シーズン後半には、そうした攻め方も序盤戦より見られるようになりましたが、ご自身でプレーしづらい部分はなかったのですか。

結構、周りからは言われますけど、僕は、周りに思われているほどのストレスを感じながらプレーしていませんでした。そういうなかでも自分が自分の色を出せる場面もたくさんあったので。

もちろんチームが一番いいもの、いい形をしっかり見つけ出すことは大事なんですけど、システムどうこう以上に、まずは監督が(自分を)信頼してくれていることを感じながらプレーできたので、それに勝るものはないというか。選手としてそれが一番だと思っています。

いろんな話の交換というのはシーズン当初は多くありましたけど、すごくいい関係性で戦い抜くことはできたかなと思います。

――シーズン終盤になると、瀬川選手が出ている時もそうですが、ガードとビッグマンのピック&ロールも序盤戦以上に見られるようになりました。そのあたりの変化については。

選手の判断、監督の指示も多いですが、流れのなかでの判断なので、(プレーの選択について)選手の判断であることが多かったと思います。

――チームディフェンスが機能してハマった時の威力は、凄みを感じさせるものでした。

そこは雄太のサイズ、原(修太)、田代はフィジカルで強みを生かしていましたし、(金近)廉も外国籍相手に4番ポジションまでカバーするなど、ディフェンス面でかなり成長したなと思います。

ポジティブに捉えられる要素もたくさんあって、(CSの)アルバルク東京戦もそうですし、宇都宮戦にしても自分たちがやられたくない選手には最後の2試合はやられなかった。ただ、違う選手が決めきってきた、そこがすばらしかったんですけど、ディフェンス面では初戦以外はやれることはできていたと思います。

「代表活動のあるなしは、僕のなかでは(Bリーグでのプレーに)あまり関係ない」

――宇都宮ブレックスと琉球ゴールデンキングスのファイナルはどういうふうに見ていましたか。

特に僕は、自分たちが負けた相手がどうなっているかというのは、そこまで意識しないので、両チームともベストを尽くしてほしいと思って見ていました。ただ、今年はプラス、本当にバスケットの魅力が詰まった、素晴らしいファイナルだったと思います。 

見ていてもワンポゼッション、ワンポゼッションのレベル、本当に一つのミスが響くような緊張感がある試合だったので、Bリーグを見てこなかった人にも、普段NBAしか見ない人にも魅力が伝わったんじゃないかなと。本当にイチバスケファンとして感動する、素晴らしい試合だったと思います。

――今夏の代表活動についてはこれから決まると思いますが、東京五輪前から日本代表としてずっとプレーをし続けています。夏の活動がBリーグのシーズンに与える影響というのはどのように捉えていますか。

正直、代表活動に参加してる、していないっていうのは、僕のなかでは(Bリーグでのプレーに)あまり関係ないと思います。代表活動が終わった後にはしっかりオフをもらってチームに合流していますし、ある程度しっかり調整しながらプレーしてきているので。

ほかの選手も同じだと思いますが、シーズン中の細かいケガに対して、どうコントロール、ケアしながらシーズンを戦っていくか。その点に関して、今シーズンは難しい部分のあった1年だったということです。

――なるほど。最優先はコンディションを整えることですか。

休むことよりも、まずはケガを治すことですね。本当に痛みがゼロになる状態にしてから、動き出さなきゃいけないなとは思っています。


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牧野豊 Yutaka Makino

東京・神田生まれの神田育ち。上智大学卒。1993年から約30年間、スポーツ専門出版社で雑誌・書籍・ウェブ媒体の取材・原稿執筆・編集全般に携わる。その間、バスケットボール(NBA含む)、アメフト(NFL含む)のムック、水泳競技、陸上競技の月刊定期誌の編集長を歴任。各競技の国内主要大会をはじめ、アジア大会、世界選手権、オリンピック等、国際大会の現地取材を経験。