宇都宮ブレックスが千葉ジェッツをホーム・日環アリーナ栃木に迎えてのBリーグ2024-2025・B1チャンピオンシップ(CS)セミファイナル。Bリーグを代表するライバル同志の対戦は1勝1敗で最終第3戦にもつれ込み、宇都宮が序盤から激しいディフェンスを軸に、千葉を圧倒。82対71で下し、3大会ぶり4回目のBリーグファイナル進出を決めた。
第3戦、宇都宮は第1クオーターこそ少し硬さが見られたものの、千葉のポイントガード陣に激しいプレッシャーをかけ続け、それがチーム全体にリズムを与えていた。特に千葉の先発・18歳の瀬川琉久には35歳のベテラン・遠藤祐亮、ケガの影響もあり瀬川の控え役に回っている大黒柱の富樫勇樹には若手の成長株、小川敦也が主にマッチアップし、千葉に思うようにボールを回させなかった。
それが決定的に表れたのがターンオーバー数。千葉は前半だけで17(瀬川3、富樫5)、宇都宮はわずか3(試合トータルでは千葉24、宇都宮13)。43対31で宇都宮リードで迎えた後半には、千葉も激しいディフェンスを見せ、一時は最大20点あった差を試合時間残り1分には4点差まで詰めただけに、前半の出来が試合を決するカギとなった。
オフェンスでは宇都宮は前半、ギャビン・エドワーズを中心にペイントエリアを中心に得点を重ねていくが、この日は何と言っても、グラント・ジェレット。内外自在に得点を重ね、3ポイント5本すべて成功を含むチームトップの27得点と主役級の活躍を見せた。
宇都宮と千葉は昨年のCS(クォーターファイナル=1回戦)でも同じ宇都宮のホームで対戦し、ワイルドカードでCS進出を決めた千葉が2勝1敗で東地区1位の宇都宮を破っていたが、そのリベンジを果たす形となった。
ここでは、CSファイナル進出を決めた宇都宮のジーコ・コロネルHC代行、比江島慎、小川敦也が記者会見での声を紹介する。
コロネルHC代行「完璧にプレーすることは難しいけど、完璧に準備することはできる」
今年1月からチームの指揮をとってきたジーコ・コロネルHC代行。ケビン・ブラスウェルHC(ヘッドコーチ)が今年1月に心臓疾患のため現場を離れ、2月に他界するという難しい状況のなか、メンタル面のコントロールも含めてチームをファイナルへと導いた。
千葉とのシリーズでは試合ごとに主導権が入れ替わるなか、最終第3戦では見事なバスケットボールを展開。そのバスケットボール哲学について、「完璧にプレーすることは難しいけど、完璧に準備することはできる」と語った。
「今シーズンを通してアグレッシブにディフェンスをし続けることをやってきました。オフェンス、ディフェンスは連動しているものですが、考え方としてはオフェンスでシュートが入らない時に、より力を入れてシュートを入れようとしてもいい結果にならない。オフェンスでリズムをつかめない時は、ディフェンス面で強度を上げたりする。ディフェンスは自分たちの努力、頑張りでよりよく(ゲームを)していける。完璧にプレーすることは難しいけど、完璧に準備することはできる。そういうことを選手たちに話して試合に臨んできました」
比江島慎その1「必ず見てくれていたと思うんで」
34歳と円熟期を迎えている比江島慎。千葉ジェッツとの第3戦に勝利した直後、「天を見上げていたのでは?」との質問に対して、今シーズン途中に急逝したケビン・ブラスウェルHC(ヘッドコーチ)に勝利を捧げる意味もあったと説明。「彼は負けず嫌いなので、(昨年のCSで千葉に敗れたことを)相当悔しがっていたので、(今回勝てて)率直にうれしいという感情がありました」。
比江島慎その2「今日に関しては本当にチームメートに感謝」
レギュラーシーズンの3ポイントは昨シーズンより試投数を増やした上で成功率44.3%とリーグトップの成績を残した比江島慎だが、第3戦では3ポイント成功1に7得点。昨季リーグMVPの大黒柱・DJニュービルも得点こそ10だったが、8リバウンド、6アシストとロールプレーヤー系に回り、得点ではエドワーズ、ジェレットが20点超と際立つ活躍を見せた。
「今のチームはどこからでも得点が取れるのが強み。自分もそうですが、DJも点を取っていなくても、アシストに回り、ほかの選手が得点面で活躍する。これは(亡き)ケビン(ブラスウェル)が築いたもののうえに作れた形だと思います」
比江島慎その3「昨年のリベンジが果たせたので、少し報われた」
宇都宮の第3戦の勝因は何よりもチームディフェンスが冴え渡ったこと。比江島慎自身は得点面で目立つことはなくても、ディフェンスではしっかり貢献。そして、1年前のクオーターファイナルでの敗戦の雪辱を晴らした。
「今日は出足からディフェンスで集中できたと思う。途中でやられてしまう場面もあったが、ほぼほぼ40分集中してできた。ディフェンスの勝利」
「昨シーズンの負けから多くを学んで、1シーズンを通して、CSに入ってからも成長し続けてきた。千葉に勝ちたいという気持ちが強かったので、昨年のリベンジが果たせたので、少し報われたと思います。ただ、ここで満足することなく、このまま優勝できればいいなと思います」
小川敦也「自分がここでやってやろうと1年間準備してきた」
ベテラン中心のチームのなか、今シーズンの宇都宮の成長の証しとなったのが若手の成長。その代表的な存在のひとりが22歳の小川敦也だ。
リーグでもトップクラスのスピードを誇る小川はそのオフェンス面で注目を集めていたが、「昨季はディフェンスでチームの穴となっていたので(大事なところで)使われなかった」と振り返り、今シーズンはディフェンス面をより意識。実際コート上で成長を遂げ信頼を勝ち取り、レギュラーシーズンでは前年より30試合以上多い51試合に出場し平均10分59秒のプレー。昨シーズンのCSではわずか1分13秒しか出場していなかったが、今シーズンはここまでCS全5試合に出場して平均14分59秒プレーしている。
ベテランの遠藤のバックアップだが、「ブレックスのディフェンスは遠藤さんから始まる。そういう先輩方が頑張っているなかで、自分ら若手が強度を上げて頑張ることができた」と頼れる先輩の存在が思い切りの良いプレーにつながっていると感謝する。
千葉とのシリーズでは、富樫勇樹をメインに瀬川琉久、時にクリストファー・スミスにもフィジカルにマッチアップし、簡単にプレーさせなかった。
「チームにいい影響を与えるためにベンチから出ているので、ファイナルでもそこを突き詰めていければと思います」
「今年は自分がここでやってやろうと1年間準備してきた。コートに立った時には何かできる自信があったし、チームにいい影響を与えるためにベンチから出ているので、そこを突き詰めていければと思います」
宇都宮はCSファイナルに4大会連続進出となる琉球ゴールデンキングスと今シーズンの王座をかけ、5月24日から横浜アリーナで対戦する。この2チームのCSファイナルでの対戦は3大会ぶり2回目。前回は宇都宮が2勝0敗で勝利を収めている。

