宇都宮ブレックス(東地区1位)と琉球ゴールデンキングス(西地区1位)の間で争われたBリーグファイナル2024-25。勝負の行方は最終第3戦までもつれ込むなか、宇都宮がシリーズ通算2勝1敗で琉球を倒し、Bリーグ王座に輝いた(2025年5月24、25、27日@横浜アリーナ)。
宇都宮はBリーグ史上最多となる3回目の優勝に。また、Bリーグ史上初めて、Bリーグ王座に辿り着いたレギュラーシーズン勝率1位チームとなった。
昨季のリーグMVP、宇都宮のDJニュービルは、ファイナルMVP、またチャンピオンシップ(CS/プレーオフ)MVPにそろって選出。
両チームはBリーグ開幕以降実施された8回のCSにおいて、ファイナル進出4回と2年に1回のペースで勝ち上がってきていた。
ファイナルでの直接対決は今回が3年ぶり2回目。前回の2022年は宇都宮が2勝0敗で琉球を破っていた。
琉球は2年ぶり2度目のBリーグ王座には届かなかったが、エース岸本隆一がケガで戦線離脱するなか、今回でリーグ史上最長の4年連続でのファイナル進出。初戦こそ落としたものの、第2戦を取り返し、第3戦でも序盤から主導権を握り続けていた。
ここではファイナルを通じて印象に残った両チームのコメントを紹介する。
コロネルHC代行「こんなチームは、ほかにない。誇りに思う」
優勝後のインタビュー、宇都宮のジーコ・コロネルHC代行は、感情を滲ませながら優勝を振り返った。今年2月にケビン・ブラッセルHCが病気のため他界。その際、チームのメンバーたちは病院を訪れ、指揮官の訃報にともに涙したという。その悲しみを抱えながら戦い続け、3年ぶりの頂点に。メンバーたちの多くの目には、光るものがあった。「(2月に)病院で一緒に涙を流したメンバーたちが(その後)戦い続け、今日、このコート上で(優勝し)一緒に涙を流している。こんなチームはほかにない。誇りに思う」とコロネルHC代行。ブラッセルHCの意志を引き継ぎ、見事チームを頂点に導いた。
コロネルHC代行「Mako is Kobe、宇都宮のコービーと、ケビンは言っていたので、信じている」
第2戦に敗れた宇都宮のコロネルHC(ヘッドコーチ)代行がブラスウェルHCの言葉を引き合いに出し、オフェンス面で不振が続くエース、比江島慎について、変わらぬ信頼感を示した。
比江島は初戦が5得点、第2戦が8得点。フィールドゴールは各試合とも8本中2本成功、フリースローは2試合合計で10本中3本成功と、オフェンスでは本来の力からかけ離れた出来に終わっていたが、「ケビンは『Mako is Kobe』、宇都宮のコービーと言っていたように、彼がプレーし続ける限りは彼に合わせていく。彼は特別な選手。自分たちはそれについていくだけ」と、第3戦に向けてコメントした。
この元NBAロサンゼルス・レイカーズのレジェンド、故コービー・ブライアント氏を引き合いに出したコメントは、その前に比江島が自身の出来を問われたことに対して「打ち続けろとみんなが言ってくれているので、自分を信じて打っていきたい」という答えを受けてのもの。
比江島慎「追い込まれないとやらない性格なので。すいません」
その比江島は迎えた第3戦も琉球の脇真大や松脇圭志らの厳しいマークに苦しみ、前半を0点で終え、最初の2戦の状況が続いていたが、後半についに目覚める。外のシュートの感覚が掴めないなか、リングに近いペイント近辺に攻め込み、2ポイントシュートを重ねリズムを掴むと、第4クォーターの勝負所で存在感を発揮。残り33秒の逆転弾を含む2本の3ポイントを決め、合計17得点をマークし、優勝に貢献した。
コート上で行なわれたインタビューでは比江島らしい表現で、逆転3ポイントを振り返った。
「まあもう、そうっすね。追い込まれないとやらない性格なので。すいません。でも、気持ちで決め切ったシュート(逆転の3ポイント)だと思います。シュート以外は悪くないと思っていた。シュートが入ってくればオフェンスも良くなると思っていたけど、チーム全体で良かったので、そのなかで決めきれればと思っていました」
ニュービル「魔法のような時間帯でした」
大黒柱として宇都宮を引っ張り続けたDJニュービルは第3戦も変わらず活躍。琉球のディフェンスにチーム全体が苦しめられるなか、何とか得点を重ねてビハインドのなかでもつなぎ続けた。そして64対66と2点差まで詰め寄って迎えた第4クォーター残り1分15秒、プルアップの逆転3ポイントをねじ込んでみせた。ニュービルはその場面を「試合の流れは苦しいものが続いたが、ジーコHC代行が自分の仕事を信じてくれてボールを託してくれたし、この大きな舞台であのようなシュートを決められるなんて、魔法のような時間帯でした」と振り返った。
ニュービルはこのファイナル3試合では平均21.7得点、6.0アシスト、4.7リバウンドMVP、またCS(チャンピオンシップ=プレーオフ)全8試合でも平均16.6得点、6.0アシスト、5.0リバウンドをマークし、ファイナルMVP,CSMVPにそろって選出された。
桶谷大HC「キングスって、そういうことやん」
第2戦はインサイドのフィジカルゲームを軸に宇都宮を圧倒し、シリーズを1勝1敗のタイに戻した琉球の桶谷大HC。セミファイナルの三遠ネオフェニックスとのシリーズでも初戦を落としてからの2連勝で勝ち上がってきた経験、また4年連続ファイナルに進出した経験も含め、その修正力は経験に裏打ちされたものだった。その秘訣を問われ、次のように答えた。
「ちょっと偉そうかもしれないですけど、やっぱり4年連続ファイナルに来ていて、三遠(ネオフェニックス)戦も1試合目を負けて、昨日、本当にファイナル? っていう感じでプレーしたように、僕らのエナジーが足りなかった。だから、ファンの皆さん(の応援)も、あれ? ブレックスさんに負けているな、と感じていた部分もありました、正直。ただ、逆に今日(第2戦)くらい、3戦目もエネルギーを出してくれたなあと、すいません、偉そうですね。でも、キングスってそういうことやん、僕らアンダードッグなんで、みんな(選手もファンも)声を出して頑張れれば」
第3戦は惜敗となったが、エースの岸本隆一がコートに立てないなか、最後まで戦い続けた琉球の姿は、称賛されるものだった。また、桶谷HCは沖縄におけるチームの存在意義、ファンの存在について、「勝ち負けがあるのは残酷だが、僕らの試合を見てファンの皆さんがエネルギーをもらえたり、子どもたちがキングスに入りたいと思うような、勝ち負け以上のものを地域に与えられたらと思います」と語った。